k-344
王城に到着すると馬鹿デカい玄関でゲルニカ陛下が待ち構えていた。
というか陛下と王国軍参謀長のシルフィードさんに問答無用で両腕をガチホ(ガッチリホールド)されどこかに連行されてしまった。
鼻息荒い二人の勢いに押され、かばんの中に霊薬入っているんで気をつけてくださいね? と言う間もなかった。
一応カバンをずらしてガードしたので、ビンが割れるようなことはなかったのだけれども。
連行された先は、謁見の間ではなく少女が眠る寝室だった。少女の名は、高貴なる第三王女かつ絶世の美少女ヴィオラちゃん。ヴィオラちゃんのベッドの傍らには枕詞に「傾国の」とつけても不思議はない絶世の美女で王妃のイザベラ様がいた。
遺伝って怖いねー。
確かゲルニカ陛下の子供は王子様が3人と、王女様がこのヴィオラちゃん含め3人いたはず。側室はいないと聞いている。
子供6人かあ。
そりゃ陛下も頑張っちゃうわけである。毛根復活に目を血走らせていたのも、イザベラ様を想ってのことだろう。お熱いことである。
まあ俺にとっての傾国の美女はユリナさん一択だけどね。ちらりとユリナさんをみると、ヴィオラちゃんを心配そうな目でみていた。
そうだった。少女の病気のことに集中せねば。
苦しそうに胸を上下させているヴィオラちゃんを鑑定してみると、サラサから聞いた通り【A級指定難病のパイロン病に罹っている】と出た。
サラサ経由で購入した医学書によると、パイロン病は体全体の臓器をゆっくりと侵食し全身に激痛を与えた後、最終的には脳がやられて死に至るという悪魔的な病気であると書いてあった。
王女様であるということを抜きにしても、こんな小さな女の子が苦しんでいるのは胸が痛む。何とかして助けてあげたいという気持ちが湧いてくるよ。
そして霊薬エリクシスを取り出し「これが霊薬です」と伝えると、陛下は手をワナワナと振るわせて霊薬のビンを受け取ったのだった。
やはり陛下がこの薬を探していたというのはサラサの言った通りだったようだ。
陛下はシルフィードさんが用意した鑑定の魔道具で霊薬エリクシスを鑑定。薬を飲む場合などに鑑定の魔道具で安全を確かめるのは普通とのこと。
俺も娘がいたら薬を鑑定して効能をチェックするだろうから、当然か。
間違いなく本物の霊薬エリクシスであることを確認したゲルニカ陛下は霊薬を俺に返し、「ムスメヲナオシテヤッテクレ……」と涙ながらに懇願されたのだった。
治癒士貴族として名が通っているらしい俺(特にAGA的フサフサ治療が貴族の間で話題になっている模様)は、ヴィオラちゃんを抱き起こすと、子供用のコップに取り分けた霊薬を少しずつ飲ませていったのだった。




