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翌朝、俺はゲルニカ陛下に先触れを出し王宮に向かうことにした。
もちろん霊薬エリクシス完成の報告と献上のためだ。
今回は一応妻であるユリナさんと一緒に行くことにした。おそらく話の内容からしても、女性がいた方が何かと助かると思うからだ。
一応陛下から執事や屋敷の使用人、御者をつけてもらっており、馬車を自分で動かす必要はなかった。(我が家には使用人らしき使用人は、メアリーさんと料理人のトクジュウさんしかいない)
本来なら男爵や子爵であればもっと使用人を雇うのが普通なのだそうで、使用人がほとんどいないことを伝えると陛下に呆れられた。
俺は虚栄心とか自己顕示欲は皆無だし、むしろDIYや節約術といったミニマリスト思考というか、自分で何もかもやりたいと思う性質だ。
元の世界でも、ホーマックで買ってきた簀の上に高級コアラマットを敷いて安価に最高の睡眠を手に入れることが幸せだと思う人間だった。
異世界にやってきても、そういった人間の本質みたいなものは変わらなかった。
逆になぜ自分のプライベート空間で大勢の部下に囲まれて暮らさなきゃいかんのかすら思う。息が詰まりそうなので、俺的にはご勘弁願いたいところである。(メアリーさんは慣れてきたので抵抗はないんだけど……)
そんなことを考えつつ、馬車(王家所有の高級なヤツ)の中でユリナさんに霊薬エリクシスのこと、陛下の娘である第三王女ヴィオラ様が重篤な病に罹っているらしいことを伝えておいた。
おそらく流れによってはヴィオラ様に謁見することになるだろう。その場合高確率で王妃様に謁見することになることが予想されるわけで、ユリナさんにも心づもりというものが必要だろうからな。
そうして、ようやく馬車の窓からまるでフランス凱旋門のような王宮の正門が見えてきたのだった。




