k-342
邸宅に戻った俺は、マルゴたちの酒の相手はそこそこに薬作りを再開することにした。
まあ、ダメで元々。出来たらラッキーくらいの心づもりでしかないけどな。
えっと、どこまでやったっけ。俺はレシピを書いたメモをチェックする。
そうそう、竜神の祝福を受けた聖水を作るところまでできたんだったな。
あとは魔獣竜の生き血かあ……。
俺はテイムホテルを発動し、こっそりとビードラが眠る亜空間を覗き見る。おうおうビードラくんは、いびきを立ててよく眠ってらっしゃる。
これ絶対嫌がるやつだよね?
俺はユーチューブでよく見ていたワンコ動画の中でも、病院に連れてこられたことに気づいたシリーズを思い出していた。
ワンコならイヤイヤしても可愛いもんだけど、4LDKのマンションサイズが手狭に感じられるビードラがイヤイヤしたら大変なことになりそうだ。
少なくとも陛下に借りたこの邸宅が半壊することにはなるだろうね。
なので俺は静かに亜空間に手を突っ込み、眠っているビードラの鱗のない部位にグリーネ麻酔草の煮汁を塗り、マルゴに特注して作ってもらった特殊な金属で出来た注射針を指して生き血を採取したのだった。
◆
これで一通りの材料は揃ったはずである。
というか早く調合しないと生き血が生き血でなくなるので、さっさと始めねば。
俺はレシピどおりの比重で、材料を魔力を込めながら混ぜ合わせていく。
最後にビードラの生き血を垂らしたところ、液体が銀色に発光した。
『個体名:奥田圭吾は、錬金術Lv13を取得しました』
『個体名:奥田圭吾は、錬金術Lv14を取得しました』
『個体名:奥田圭吾は、錬金術Lv15を取得しました』
完成したかを確認するよりも先にスキルのレベルアップが告知された。
どうやら完成したっぽいので液体を鑑定してみると、
【霊薬エリクシス:あらゆる難病を治癒する霊薬。体力、魔力、気力回復効果(極大)、状態異常回復効果(極大)、部位欠損修復効果(極大)】
どうやら俺は、「当代で最も偉大な錬金術師様」でも成し得なかった偉業を達成してしまったようだ。
時計を見ると深夜だった。
作業の後片付けをし身綺麗にした俺は、ユリナさんが眠るベッドに潜り込んだのだった。




