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レストラン “子狼の食卓(王都ラースティン店)” ではVIPルームを予約していた。
ゲルニカ陛下のたってのご要望で急遽出店することになった俺の店。
そのVIPルームはもちろん王族や諸侯貴族をもてなすことを想定して設計したものだ。
そして一応俺も貴族ということになっているので利用して格を下げる心配もない。
まあ、そもそもこの店のオーナーなんだからどの部屋を使おうとも杞憂なんだろうが。
サービサーは流石に陛下のお膝元だけあって、王城に仕えるレベルの一流の執事や給仕を雇うことができた。
そんな人たちにお姫様扱いの歓待を受け、女性陣のテンションは爆上がりの舞い上がり。
してやったりと俺は心の中でニヤニヤする。
ターニャとアッシュは色気よりも食い気みたいで、目をキラキラさせて涎を垂らしている。その姿を見てほっこりする俺。
料理はこちらの異世界で俺が発見(調理法も)したウニやらウナギやらフォアグラやらの絶品料理。加えて、イトシノユリナで立ち上げた食品会社で開発した調味料や各種お酒というオマケつき。
陛下のお膝元というだけあって、建築家のテイラーさんと何度もコンセプトと設計を見直して作っただけあって、最高の出来になっていた。
街行く人に店の評判を聞くと、多くの貴族が通う繁盛店となっているとのこと。
本来であれば自分でサービスを受けて確かめねばならないところだったんだけど、俺は俺で街づくりの仕事があったのでそこまで手が回らなかった。
部下を信用して遠隔の画像と報告で何とか判断して店を作ったんだけど、ようやく自分で確かめることができて良かったよ。
部下で店の責任者として採用した元王城勤めのトップシェフはオーナーがサービスチェックに来ているということで間違いなく緊張しているだろうに、それをおくびにも出さず俺たちを最高のクオリティでもてなしてくれた。
流石は陛下一推しのシェフだ。料理の腕だけじゃなく接遇まで一流とは。
女性陣には、まるお姫様になったような煌めくような夜のひと時を。
食いしん坊の子供たちには、まるでお菓子の国に行ったような夢のひとときを。
酒好きの酒豪どもには、極上の酒と肴。
まるで隙がない最強の店。脱帽である。
退店時俺はトップシェフに従業員全員に敬意を表し、ビードラ金庫から金貨100枚を取り出し、サービス料金とは別にチップを「今後ともよろしく」と言って気前よく渡したのだった。
賞賛の言葉も嬉しいけど、自分の仕事に誇りを持って取り組んでいる人にとっては何よりも報酬が嬉しいもんだってのはわかってるからな。
大通に面した “子狼の食卓” を出た俺たちは、トップシェフから家で飲む用のお酒とアテを土産にいただき家路についたのだった。
マルゴたちは夢のようなひとときの余韻に浸り、しばらくずっと上の空のままだった。




