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一応こちらに遠征する時に錬金術に必要な道具一式は持ってきてあった。
ポーションは買うよりも作った方がお得だからな。
霊薬エリクシスのレシピをメモした俺は、ちょうど調べものが終わったサラサと合流し邸宅に戻ることにした。
マルゴとジュノは既に復活していて、「今日はどこで飲む?」と話をしていた。懲りないやつらめ。
俺はサラサとエルザがきたこともあって、王都に出店した子狼の食卓の予約を人数分とっていたので、「勝手に飲みに出かけるなよ?」と釘を刺しておいたのだった。
さて、レストランの予約時間まではまだ少し時間がある。
ひとまず部屋にこもるとしよう。
……ブリリアント氏の論文によれば霊薬エリクシスは万能薬と言って良いような代物のようだ。
もしそれが作れるのであれば、陛下の娘さんのためだけでなく、多くの人を救うことにもなるだろう。チャンレンジするだけの価値がある。
材料として必要なのは、まずイレーヌ薬草、ムレーヌ解毒草、ベルジン魔力草の3つ。これはおなじみのものなので用意できる。
難しいとされているのは “竜の力で清められた聖水” “魔獣竜の生き血” だ。
俺はまず、水差しに入っている飲み水に試しに “竜神の聖域” をかけてみることにした。
ゼラリオン教の神像にかけると、像が竜のものに変形し聖属性をともなった聖域効果を発するという効果があるスキルだ。
これを水に使ってみた。すると、
【竜神の聖水:竜神の祝福を受けた聖水。不死者に特攻効果がある他、魔除け、呪いを清める効果がある】
というものができた。
聖水を光にかざし観察していると、
「どーん!」
「ワンワン!」
お出かけ用におめかししたターニャとアッシュが俺の部屋に突撃してきた。
足に抱きつくターニャ。ジャンプして顔を舐めてくるアッシュ。かわいい。
レストランの予約時間が来てしまったみたいだな。
しゃあない、続きはまた後にするか。
貴族として見られているらしいことを最近になってようやく意識し始めた俺は、ユリナさんに恥をかかせないよう英国紳士風の服に着替え出かけることにしたのだった。




