k-338
サラサは商売の勉強をするため、一時期王都ラースティンの学校に通っていたことがあったそうだ。
そしてラースティンには立派な王立図書館があり、薬やモンスターに関する本も充実しているから俺でも楽しめるかもしれないとも言っていた。
俄然興味が湧いた俺は、サラサと一緒に王立図書館とやらに行ってみることにしたのだった。
王立図書館は俺が通っていた大学の大学図書館にも負けないくらいの立派なレンガ造りの建物だった。
こんな場所があったとは盲点だった。
アッシュキャノンをするくらい暇だったんだから、毎日通うべきだったな……。
図書館の中に入ると、古い紙の独特の匂いがした。
俺は学生当時教授の助手バイトをしていて、書庫奥にしまってある超マニアックな文献を探しに行ったりすることもあった。
それと似たような雰囲気を感じ、なんだか懐かしい気持ちになった。
入館証でも作るのかな? 思っていたら王国貴族は顔パスなんだそうだ。
便利なシステムだ。
サラサに案内され、薬や医療関係の書架にたどり着いた俺は、本の背表紙を指でなぞりつつタイトルを確認していった。
そして “霊薬エリクシスとその製薬法の探求” というタイトルに目が止まった。
その本を抜き取りサラサに見せると、「近年では作り出せたものはいない、ほぼ眉唾ものの薬だ」と言った。
また、陛下の娘である第三王女のヴィオラ様が重たい病気に罹っているそうで、陛下がこの霊薬エリクシスを金に糸目をつけずに探しまわっているらしいと教えてくれた
そんなものを俺ごときが作れるはずがないのだけど、チャレンジすること自体は悪いことじゃない。
というわけでサラサにはしばらくこの本を読むとジェスチャー混じりで断って、メモをとりつつ読書に励むことにしたのだった。
サラサはサラサで調べたいことがあるようで、「商業・経済関連の書架にいるから終わったら来てね〜♪」と言い去って行ったのだった。




