アランとディーン ぱーと2
アランとディーンがイトシノユリナに足繁く通うようになったのは、もちろん可愛い娘たちがしっかりやっているか心配だということもあるが、新しい町に商売の匂いを感じたということが大きかった。
そして、その予想は的中した。
ウォーターボードを使った上下水道。工業地区、商業地区、居住地区と用途別に土地を分けた環境に配慮した町づくり。
ブルーウルフが町を守るという前代未聞の状況。常人には到底不可能な魔獣竜の討伐に成功したという噂もある。
新しく貴族直営の孤児院を作り、そこで暮らす子供たちが笑顔で現場で汗を流す大人たちを手伝っている様子を目の当たりにした。
イトシノユリナは活気と希望に溢れた町だった。
そんな夏のある日、北のハイランデル王国といつもの小競り合いをするため、ケイゴオクダ率いるヴォルフスザーン男爵軍が出陣することとなった。
アランとディーンは商業ギルドの責任者としてハイランデル王国に出入りしている商人にも伝手があった。
伝手を駆使して調べたとこ、確信には至らないものの微妙な違和感を覚えた。
「物や金の流れが例年とは違う気がする。お前はどう見る」
アランが書類をディーンに渡して聞く。それを素早く読んだディーンは。
「この情報だけでは断定できないかと。しかし鉄や小麦の相場が例年と比べ不自然にも思えます。警戒するにこしたことはないでしょう」
そう言ったディーンは執務室に戻っていった。
そしてアランとディーンが感じた違和感は、杞憂に終わらなかった。
ある日、アランとディーンの元へ部下が血相を変えてやってきた。
「伝令です!! ハイランデル王国軍の猛攻によりバラン砦が陥落したそうです!! ランカスタ王国軍参謀本部より、支援要請が届いております!!」
アランは部下から書類をひったくると急ぎ目を通した。
「商人たちに通達。持てるだけの金目のものを荷馬車に積みイトシノユリナに行くぞ。隣国から物資を調達して、北へ届けるんだ」
「承知いたしました!!」
部下はそう言うと踵を返し走って言った。
アランはイトシノユリナで商人として奮闘しているだろう愛娘の顔を思い浮かべる。それからすぐに自分の伝手を総動員して商人仲間に手紙を書いたのだった。




