k-331
俺たちが敵側のスパイであると考えた人物。それは冒険者ギルドの魔法指導官で、俺にウインドやライトの魔法を教えてくれた “ハン先生” だった。
ハン先生は義足に義眼だ。
そして、俺がバイエルン様の右腕を部位欠損ポーションで治療したあの日、その場にハン先生もいた。
俺は同じものを作りましょうか? と尋ねたが錬金術師でもあるハン先生はレシピだけ聞き「自分で作る」と言って断った。
そこまではいい。何か思うところもあって、戒めのような意味で身体を不自由なままにしているのかなと思っていた。
だが、そうではなかった。
ハン先生はハインリッヒに対し「これで冒険者に復帰できるかもしれない」と嬉しそうに言っていたというのだ。
そうであれば自分で作ったのなら既に治っているはずだし、自分で作れないのなら俺に依頼すれば済む話だ。
なのに、ハン先生は義足義眼のままだった。
これがハインリッヒが感じた “違和感” だった。
そこで俺たちはハン先生の正体を突き止めるため、練兵訓練中に普通の体力ポーションだと偽ってエギルの回復ポーション(部位欠損ポーション)を飲んでもらった。
だが彼の目と足が治ることはなかった。
こっそり彼を鑑定してもハン先生の名前とステータスが表示されるだけで不自然な点はないけど、でもこれでハッキリした。
彼はハン先生に化けた何かであるということだ。
そして裏をとるために、ホワイトさんの伝書鳩を使ってレスタとイトシノユリナにあったハン先生の書斎を探索した。
すると、石化したハン先生がレスタの書斎の地下倉庫で見つかったのだった。(すでに石化解呪ポーションでハン先生は治療済み)
そして敵部隊を殲滅した今、ハン先生の姿をした何かを泳がせる理由はなくなった。
俺はジュノら軍の実力者、ターニャとアッシュを伴って、ハン先生の正体を暴くことにしたのだった。




