k-328
シルフィード参謀長に敵がバラン砦で挟撃を画策していることを報告した俺は、すぐに参謀部が立案した次なる指令を受けた。
ランカスタ王国軍の背後を突こうとしている敵諜報部隊1000。それをさらに背後から同数の兵力で襲おうというのだ。
参謀部立案の作戦はダブルバックアタックと呼ぶこともできるので、作戦名DBAと名付けることにした。
作戦は勇者を中心に俺が1000ほどの裏準子爵軍を編成して遂行することになった。
なお敵が追う囮となる準子爵軍を表準子爵軍と呼ぶことになっており、表準子爵軍にはランカスタ王国軍の殿をさせ、あえて勇者が目的の敵が食いつきやすくした。
同時に裏準子爵軍に勇者を配置したのも同じ理由で、敵の目的が勇者である以上、こちらの伏兵に勇者がいれば敵の動揺を誘いやすいだろうという目論見があってのことだった。
裏準子爵軍の足りない人員は侯爵でもある王家直轄の軍とシルフィード参謀長の領軍を借り受けることになり、その作戦の指揮は勇者の保護者である俺がとることになってしまったのだった。(やれやれ……)
◆
俺はジュノやマルゴ、ホワイトさんを始めとした準子爵軍の幹部を集め、DBAの内容、そして裏準子爵軍を編成することを伝えた。
マルゴはそのまま表準子爵軍に残り、敵の目を欺く。
ホワイトさんは表男爵軍に加わり、敵諜報部隊の情報収集にあたり王国軍と裏準子爵軍の連携の要に。
全軍から信頼の篤いジュノは、言葉の通じない俺の全軍指揮をサポートするために裏準子爵軍に参加。
話の内容は難しくてわからないかもしれないけど、一応ターニャとアッシュにも聞いてもらうことにした。
(アッシュはユリナさんに抱っこされ、ターニャはユリナさんにべったりひっついているような状態だけど……。)
シエラさん、ゴッズさん、ミズチさんと言った実力者は優先的に裏準子爵軍に編入。
意外だったのはジュノからユリナさんを裏準子爵軍に加えてほしいと意見があったことだ。
彼女のスリングショットは奇襲向けのスキルなので、是非協力してもらいたいと言っていた。
俺としても、敵諜報部隊の攻撃に晒される表準子爵軍にいるよりは、奇襲する側の裏準子爵軍にいてもらった方が、何より近くにいてもらった方が安心だ。
ジュノの意見には二つ返事でOKしたのだった。
そして軍を再編成した俺は、王国近郊にあるシルフィードさんからひそかに練兵用に貸してもらった場所に裏準子爵軍を招集したのだった。




