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ラースティンの王城に入ると、城内は騒然としていた。
今は戦時中なのだから当然か。優雅にティータイムという雰囲気のはずがなかった。
ただ俺も一応貴族ということになっているし、向こうにも王として威厳を示す必要がある。
余裕のない中でも執事が出迎えてくれ、豪華な待機部屋に案内してくれたのだった。
王城へは俺、ユリナさん、ジュノ、マルゴ、ターニャ、シエラさん、ホワイトさん(アッシュはユリナさんが抱っこ)だけで来ており、一緒に連れてきたヴォルフスザーン男爵軍の兵士たちは城下町の宿で休んでもらっている。
テイムモンスターたちはテイムホテルの亜空間中で待機しており、いつでも出れるようにはしている。
執事の話では、陛下は謁見の間にいるそうで敵軍との対応を臣下と協議しているそうだ。
全員が謁見の間に入れるわけじゃないので、まずは待機部屋に案内したそうで。
今大至急席の準備をしているので、少々お待ちくださいとのことだった。
用意された最高級の紅茶を飲みつつ待っていると、入室の許可が出たようだ。
俺、ターニャ、アッシュ、男爵軍副司令官であるジュノ、マルゴが呼ばれた。
「じゃあ、ユリナさん行ってくるね」
ユリナさんと軽くキスを交わす俺。
それからユリナさんはターニャとアッシュを見てとても心配そうな表情。
「お願いだから大人しくしてて……!」みたいなことを言いながらギューしていた。
ユリナさんのことが大好きなアッシュは、尻尾をフリフリしながら喜んでいたよ。
そりゃまあ何か失礼がないか心配だよね。こちらは無礼罪で打ち首みたいな世界観だし。
「大丈夫だよユリナさん。俺がちゃんと見てるから」
「アナタ、オネガイネ……」
別れ際の彼女は、眉毛をへの字にしたままで心配そうな表情は変わらなかった。
それから執事さんに案内された俺たちは、近衛兵がハルバートを交差させている謁見の間の大扉の前に辿り着いたのだった。




