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260名の大所帯での行軍は中々な大変だった。
軍を維持するには先ず食料が必須だ。そうなると、戦力以外にも補給部隊を同行させる必要がある。そして大量の資材・食料を積んだ補給部隊は足が重い。
敵が交渉してくるような状況であれば、継戦能力無視でブルーウルフに乗ってすぐに駆け付けるみたいなのよりかは、継戦能力をきちんと確保した上で、できるだけ急いで向かう方が良いと判断した。
なおこのことは、陛下や王国軍も了承済みのことだ。
それに、今のように膠着状態になってくると、敵の動きを掴む諜報戦が重要になるだろうとジュノの手紙に書いてあった。
ランカスタ王国側も敵陣営にスパイを潜り込ませているらしく、こちら側にもスパイがいると見て行動した方がよいだろうとのこと。
アッシュには悪意感知というスキルがあるので、もしかするとスパイを見抜くのに使えるかもしれないと思ったのだった。
俺は道中の時間を使って、練兵訓練も行うことにした。
ターニャたちには移動中馬車の中で休んでもらいつつ、逆に行軍を終えた後に戦闘訓練を行ってもらった。(もちろん道中出現したモンスターはターニャたちに倒させ経験値にした)
もちろん俺も戦闘訓練には参加した。最近覚えたばかりのスキルも試したいからな。
魔木人形の石化を解いた俺は、魔木剣を投擲させ写経でゲットしたグラシエスシールドのレベル上げを行うことにした。
ひたすら魔力切れを起こすまで魔木剣を投擲させ、ガードし続ける俺。魔力が切れたら休ませ、移動する際には錯乱石像にして運ぶを繰り返す。
すると、
『個体名:奥田圭吾はグラシエスシールドLv2を取得しました』
…
……
『個体名:奥田圭吾はグラシエスシールドLv3を取得しました』
グラシエスシールドのレベルが上がっていった。
しかし魔木人形の闘争心には感心するばかりだ。俺ならとっくに心が折れているだろう。
と思っていたら、魔木人形の心がポキっと逝ってしまったようだった。
何度目かの石化を解除したら、攻撃する素振りを見せず、震えながら土下座をしたのだった。
人類の敵であるモンスターだけど、こうなるとなんか可哀想になってきたぞ。
しかし、それを見たホワイトさんは狂喜乱舞。ビードラの魔眼とはまた違った類の踊りを始めた。
どうやら、「こんな折伏の方法があったとは! 素晴らしい発見だ!」的なことを叫んでいるっぽかった。マッドサイエンティストめ。
案の定ホワイトさんはテイミングLv3になった俺にテイミングを強くすすめてきた。
もちろん捨てるなんて可哀そうだし、ここまで役立ってくれたんだ。面倒は見るけどさ。
OKサインを見たホワイトさんは、ハトの亜空間から道具を取り出すと、手際よく術式の準備を始めた。
それから俺はもう三度目になるテイミングの契約を、魔木人形と結んだのだった。




