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書斎で陛下たちへの手紙を書き終えた俺は、微弱な火属性付与とスライム粘液を利用して作ったお手製ホットアイマスクで疲れた目を温め癒していた。(ちなみに工房には、俺が快適に過ごせるように作った完全なる趣味アイテムが多数ある)
俺は、先ほどの考えをさらに進めることにした。
今まで俺は、グラシエス教とゼラリオン教に善悪の区別はないと思っていた。
だが仮にグラシエス教が善でゼラリオン教が悪だとすれば、一つの仮説が浮上する。
グラシエス様、つまり善なる神様の加護を受けたターニャが《《勇者》》なのであれば、ゼラリオンという神様が仮にいて、その神様が邪悪なのだとすれば、その加護を受けたゼラリオン教の親玉がもしかすると勇者と対をなす《《例のアレ》》なのではないかというものだ。
その点についてはシエラさんもはっきりとはわからないそうで、写経した教典にも書かれてはいなかった。
だが俺には、かなりの確度で正しい分析のように思えてならなかった。
◇
それからしばらくは、竜神の聖域効果を付与した竜の石像をまるでお地蔵さんのように町の各所に設置して回ることになった。
石像作りと設置はマルゴが抱える石工職人たちにお願いした。
サラサの発案でその石像は【商品名:竜神さまα《アルファ》】と命名され鍛冶ギルドで商品化することにもなった。
シエラさんに町を調べてもらったところ、シャーロットさんに纏わりついていたものと同じ瘴気が溜まっている場所が町の至る所にあった。
俺は瘴気溜まりに竜神の浄化をかけては、竜神さまαを設置することを繰り返した。
まるで陰陽師か何かにでもなった気分である。
体調が回復したシャーロットさんやシスターたちはゼラリオン教の信仰をやめ、シエラさんと一緒に瘴気溜まりの調査とお清めに協力してくれるようになった。
シャーロットさんたちは、教会をそのままグラシエス教のものとして再出発することにしたそうだ。
瘴気溜まりの浄化とも並行し、手に入れた魔木人形を使ってターニャたちの育成も進めた。
ステータスの高い魔木人形が相手だと、ターニャたちも手加減できず、木製の訓練場がすぐに壊れてしまうようになっていた。
なので職人連中にツッチーが採ってきた鉄で訓練場を補強してもらったら、それなりに壊れなくなったよ。
そんなある日のこと、事態は急変したのだった。




