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装備の微調整を終えると、ジュノたちはすぐに王都に向けて出発していったのだった。
ジュノたちを見送った後、エルザが滅茶苦茶しんどそうな顔をしていたので、ベヒーモスシリーズの性能を書いた紙を渡して「小競り合い程度だから大丈夫」と言ってあげた。
データを見ればジュノの生還率は極めて高いことが解るはずだからな。
しかし気休めになってくれればいいと思って言ったものの、エルザは暗い顔のままだった。
それを見かねたユリナさんはエルザに、「今日はエルザの家でサラサと三人でお泊り会をしましょう」と明るく言ったのだった。
やっぱりこういうとき、女心をわかっていないポンコツ朴念仁の男には荷が重すぎる。
感情に訴えないといけないとわかってるはずなんだけど、どうしたってデータを元に理路整然と説明したくなるのは俺の悪い癖だ。
冷たくとらえられても仕方ないよなあ。
ジュノに何かあったらエルザに顔向けできない。ジュノ、絶対無事で帰ってこいよ……。
さてと、俺は俺でやるべきことをやらなきゃ。俺は自分の仕事に向き合うことにした。
まずは自分用のベヒーモス装備の作製、それからタリフ翁から預かった教典の写本だ。
その後も、ターニャたちやテイミングモンスターの育成、ジュノの抜けた男爵軍の練兵。さらには町の発展とやることがなくなることはない。
こういう時はあまり遠くを見過ぎず、無理のないように着実に毎日地道にコツコツやるというのが肝要だ。
一時的に無理することもできるけど、どうせそんなものは長続きなどしない。
それならいっそのこと、毎日の仕事量を下げてでも継続させる方が長期的に見れば実は効率が良かったりするものなのだ。
ということで天岩戸に戻った俺は、ターニャたちの訓練の進捗報告とサラサからの財政報告を聞いた後、鍛冶場に籠り、自分用のベヒーモス装備の製作に取り掛かったのだった。




