k-300
俺はビードラに阿波踊りを踊らされながらイモータルオブジェクトと化していくグラスゴブリンをボーフラを見るような目つきで眺めながら、脳を高速フル回転させて結婚式プランAからプランEまで練り上げていた。
長年の人生経験から得た俺の教訓。
それは “女を敵に回してはいけない” というものである。
学校、部活、サークル、会社でもそうだったろ?
とりあえず女を味方につけときゃ男どもなどどうとでもなるもんだ。
逆にお喋り好き・噂好きな女連中に嫌われたら、マジで面倒なことになることは男性諸君は経験済みのことだろうと思う。
とどのつまり女性陣が結婚式を望むなら、「イエッサー!!」以外ありえないのである。
あとはどれだけ、元々考えていたよ? と見せかけるだけの殿戦でしかない。
嗚呼、悲しき負け戦。この世の無常。
だが、頑張ってプランEまで考えたから大丈夫だろう。心配するな、全部上手くいく。
そうそう。
ビードラの使役を頑張っていたら、俺の方のスキル「ビーストテイム」がレベル2になった。ホワイトさん曰く、これでもう一匹契約モンスターを増やせるらしい。
ちなみにホワイトさんは伝令用のハトモンスターを数羽所持しているとのこと。
なんかポ〇モンみたいだな。
それからしばらく進むと草原が切れ、砂場地帯に入った。
これを抜ければ海に出るらしいのだが、俺たちの目の前に土の塊みたいな(砂のスライムのような)モンスターが5~6匹立ちはだかった。
未知の敵と遭遇した場合のセオリー、鑑定。
【土精:土の下位精霊。鉱物を操ることに長けている。水属性攻撃が弱点。保有スキル、水分吸収、土弾、物理攻撃耐性、状態異常耐性】
俺は御者台に座るゴッズさんに、おとり用に確保してあったゴブリンの死体を投げさせた。
すると、そこに数匹の土精が群がると、みるみる水分を吸収。ものの数十秒でシワシワに干からびてしまった。こいつはやべえ。
敵は、6匹ほど。
「ゴッズさんは触れないように盾で牽制。物理と状態異常耐性があるから他は遠距離魔法攻撃を! 水魔法が効くらしい!」
そう指示しつつ、俺は全員にストーンスキンをかけていく。肌を岩のように固くすれば多少は水分吸収を防げるかもしれない。
そしてゴッズさんにバブルの水魔法も重ねがけ。
敵の弱点である水の膜でガードすれば、水分吸収の対策になるかもしれない。
俺が防御魔法でサポートしている間に、ターニャ、アッシュ、ビードラ、ホワイトさんが遠距離攻撃を開始。
敵も負けじと土弾や水分吸収攻撃をしてこようとしてきたけど、ホワイトさんが敵のヘイトを集めるタンクスキル【バトルクライ】を盾をガンガンバトルハンマーで叩いて発動。攻撃を引き付けてくれている。
削られたホワイトさんの体力はミズチさんが魔法で回復。完璧な連携だ。
状態異常・物理攻撃が通じない敵なので、状態異常特化のユリナさんにはサラサを守ってもらっている。
そうこうしているうちに敵も一匹二匹と数を減らしていき、ついに最後の一匹となった。
するとその土精は土弾攻撃をストップし、ゼリーみたいにプルプル(触感はザリザリだろうけど)震えながらこちらの様子を伺いだした。
土精は仲間になりたそうに、こちらを見ている!
不意に何となくそんな言葉が浮かんだけど、そんなわけがない。さっさと倒そう。
俺はコボルトキングソードの遠距離攻撃スキル(魔力攻撃判定になる模様)を発動しようと身構えたが、ホワイトさんは何やら興奮した様子で攻撃をストップしろと言ってきたのだった。




