(モノローグ・???)???
私の名はヴァーリ。
魔王様に力を与えられし偉大なる魔人である。
魔王様の片腕たる私は勇者抹殺を命じられ、微かに “勇者の気配” を感じたレスタの町で任務遂行のため潜伏していた。
しかし、勇者はなかなか正体を現すことはなかった。
業を煮やした私は、レスタの町にコボルトキングをけしかけもした。
コボルトキングを討ち取った者が勇者である可能性が高いため、炙り出す作戦だ。
そしてコボルトキングを討ち取ったのは、ケイゴオクダという冒険者だった。
彼とは既知の中だったため、勇者でないことはわかっている。
勇者とは若い頃よりその片鱗を見せるものであり、彼はそうではなかった。
その後、コボルトキングを倒した功でケイゴオクダが叙爵し南の地に新しく町が作られることになった。
ボンヤリとしかわからない勇者の気配も南に移動しているように感じた。
そのため私も南の地へと移り住むことにしたのだった。
ある時私は、勇者の気配が爆発したのを感知した。
おそらくこの町のどこかだ。
私はすぐに魔法で姿を消して町の上空に飛び出ると、勇者の気配を辿った。
しかし勇者の強烈な気配は次第に消え、明確には感じとれなくなってしまった。
だが勇者がこの町にいることは間違いない。
この町をわが軍が攻めれば必ず勇者を炙り出すことができるだろう。
クフッ、クフフフフ……。そうだ、良いことを思いついたぞ?
私の口から自然と笑い声がこぼれた。
都合の良いことに、ランカスタ王国と北の隣国ハイランデル王国の小競り合いがそろそろ始まる次期が来ている。
それに乗じた作戦を立てるのが面白そうだ。
例えばハイランデル王国にモンスターの大軍を貸し付け、ハイランデル国王を “強欲” の闇魔法で操れば……。
「通信兵、魔王様はおられるか」
自室に戻った私は、魔王様のおられる宮殿へと連絡したのだった。




