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「……あ、そうだ」
俺は例の卵のことを思い出し、復活した7人が自分の部屋に戻る前に見せることにした。
全員驚いていたけど、一番驚いたのはウィザ-ドのホワイトさんだった。
ホワイトさんは石化を治してくれたことにえらく感激した様子で(+レアモンスターの卵に鼻息荒く興奮した様子で)、モンスターテイムのことならなんでも聞いてくれとのこと。
ホワイトさんはモンスターテイムの研究をしているそうで、契約している伝書バトのような連絡用モンスターを亜空間から出して見せてくれた。
何でもモンスターテイムは卵の状態にあるところから始めるのが普通で、血と魔力によって契約するのだそう。
モンスターの卵をテイムするためには、なぜか同じ成体モンスターを討伐しなければ成功しないという条件があるため、自分より強いモンスターのテイムは通常不可能。
レベルアップに必要な経験値がエクスマテリアルと呼ばれる物質で、テイミング対象がそれを察知するのだとかなんとか。
要はテイミングするモンスターを一度は倒すことが必要なのだそう。
なので自分よりも強いモンスターをテイムすることは事実上不可能。
だけど今回は、その条件を奇跡的に満たしているということらしい。
しかもベヒーモスは竜種であり、これを従えているテイマーなど見たことがないそうで、チャレンジしてみる価値は甚大であると大演説をぶち上げていた。
俺はホワイトさんの勢いに負け、ベヒーモスのテイミングに同意したのだった。
……
ホワイトさんの秘術の準備が整ったようだ。
ホワイトさんはハトの出てきた亜空間のような穴から分厚い本を取り出し、トカゲっぽい魔法陣の描いてあるページまでめくる。別の紙に黄緑色のインクでその魔法陣を描き写していった。
それからホワイトさんは描いた魔法陣の上に卵を置くと、血を一滴垂らし「×〇△××」と唱えてみろとジェスチャー付きで指示。
俺は言われた通り、魔法陣にナイフで切った親指から血を垂らし、卵に手をかざしつつ「×〇△××」と唱えてみた。
しかし卵の表面からオーラのようなものが浮かび上がり、俺の魔力に抵抗するかのようにバチバチと放電しはじめた。
するとそこで何かを思いついた様子のホワイトさんは、グラシエスの牙を指さし卵にあてろのジェスチャー。
試しに牙を卵にあててみると、卵から発せられていた抵抗オーラが消失。
魔法陣のインク文字が光り出して浮かび上がり卵にプリントされたのだった。
「ヨシ」と頷くホワイトさん。
おそらくベヒーモスは竜種モンスターだけに、竜の牙の所持がモンスターに認められる条件になっていたということなのかも。
使っているインクも何か特殊な材料でできているようだし、そもそもテイミング条件がモンスターごとに違うのだそうで。
教育などないに等しいこの世界では、モンスターテイムは秘術レベルの知識だろうな。
阿波踊りを踊ったまま石化していたホワイトさんだけど、実はけっこう凄い人なのかもしれない。
ちなみにベヒーモスの卵を鑑定すると、
【魔獣竜ベヒーモスの卵:魔獣竜ベヒーモスの卵。契約者(奥田圭吾)】
となっていたのだった。




