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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-270

 新しい町への移住者第二陣到着から二か月が過ぎ季節は初夏(鳥の壱、7月)。



 移住者第三陣の募集を締め切った。



 レスタに集まった移住希望者は4000人。(王都周辺の住民が半数以上占めている)



 この中にはマルゴやサラサといった主要メンツ以外にも、医者のキシュウ先生や冒険者魔法指南役のハン先生もいる。



 2000人いればいい方と思っていたのに、嬉しい誤算というヤツだ。



 直接話を聞いてみると、なんでも市民全員に毎月銀貨1枚配る例のベーシックインカムが凄く安心できて良いとのこと。



 そう言えば、この国って社会保障とか皆無だしなあ……。


 老後の年金や医療保険もない。


 国民皆無保険……。


(日本で政治家がそんなことを言い出したら、暴動が起こりそう)



 そう考えると、銀貨1枚もらい続けられることは、住民にとって金額以上の安心感につながるのかもしれない。



 逆にこちらの異世界では年金などの既得権益がないから、ベーシックインカムに反対する団体がない。



 なので権力側もどこに忖度することなく導入できるってわけだ。



 ということで、試しにやってみただけの割には住民のウケもよく、ベーシックインカム結構いいんじゃないかと思った。



 さて、いよいよ明日は4000人と一緒に新しい町に俺たち管理側も移動することになる。



 そう言えば、先日食料酒造の株式会社を設立したことで、他の部門(まえかけ、食卓)も株式会社にした。(里は利益を生まないので非営利法人)



 そしてレスタのまえかけ、食卓、里の経営はチャトラ、マヤ、ボクゼンさんに株の2%渡し任せることにした。


(チャトラがまえかけの支社長、マヤが副支社長、ボクゼンさんが食卓の支社長)



 当初ボクゼンさんは新しい町に来てもらう予定だったけど、王都からやってくる料理人の研修をする関係で中継地点のレスタに居た方が都合がいいという判断。



 株を渡したのは自主性をもって仕事に取り組んでもらうためということになる。


(会社が成長すれば株価が上がり自分の資産が増えるのだから頑張るだろう)




 そして俺は荷物を家から荷馬車に積み込んでいた。


 荷物は出来るだけ少なくして、かさばるベッドとか大きい家具はこのまま置いていく。


(向こうで作った方が楽だからな)



 “まえかけ” の居住区画はチャトラとマヤが賃料を払ってでも使いたいとのことだったので、格安で貸すことにした。


 大半の家具を置いていくと言ったら喜んでいたよ。




 さて、これで最後の荷物の積み込みも終わった。



 今日がレスタで生活する最後の夜だ。



「さあ、今日はとことん飲むぞ~」



 “まえかけ” のドア看板をクローズドにひっくり返した俺は、社員たちに向かってそう言ったのだった。

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