(モノローグ・ターニャ)お店番
私は名前はターニャ!
物心ついた時、気が付けばスラムで暮らしてたよ!
ジョニーたちのお願いを聞くとお金がもらえたので、それで何とか食べてた。
ある日、お腹がすきすぎてお店の前で倒れていた私をケイゴとユリナが助けてくれたんだ~。
ケイゴとユリナに拾われた私も、こうして一人でお店番をすることができるようになったよ。
最近ケイゴとユリナはエルザのことで忙しいらしい。
今日だって二人でテイラーのところにお出かけで、私だけ置いてけぼり。
私にはまだ早いだとかなんとか言ってた。
アッシュと一緒に店番をしているんだけど、朝のスパークリングワイン争奪戦が終わってから後、珍しくお客さんがこない。
「暇だ……。アッシュ、おしゃべりしよ?」
椅子から私を見上げて首をかしげるアッシュ。
(アッシュ好き好き大好き~)
しばらく見つめ合う私とアッシュ。
アッシュはベロをだしてシッポフリフリするだけ。
……。
「もう!(可愛いけど!)」
カウンターをバンバン叩きながら突っ伏す私。
でも、何が変わるというわけでもなく。
店の中にはチクタクという柱時計の音が聞こえるばかり。⌛
客がいれば少しは気が張れるんだろうけど、待てども待てども客はこない。
窓の外を見れば、眩い陽の光を浴びながらバカップルが川で水遊びをしていた。
それを見て「ターニャにはまだ早い」というケイゴの言葉が頭にエコーした。
「うがー! みんな、私を子供扱いして! 私だってチューくらいしたことあるの!!」
里にいる仲良しのリアム(♂、9歳)と悪ふざけでやった前歯と前歯がぶつかっただけの単なる頭突きだけど、キスと言えないこともない。
アッシュは大きくアクビをして椅子から飛び降りると、ユリナさんお手製の “アッシュタオル” の上で丸くなり、毛づくろいを始めることにしたようだ。
「薄情者~」
その後もひたすら静かな時間が流れるばかり。
私の足は次第に貧乏ゆすりが大きくなっていく。
「私きっとこのままボーイフレンドも出来ないまま、おばあちゃんになっちゃうんだわ……」
私はカウンターに突っ伏しながら珍しく弱音を吐いていた。
それを見かねたアッシュは “アッシュタオル” の上で大きくのびをした後、お気に入りのトラのぬいぐるみをくわえてもってきた。
投げて! ということみたい。
「もう仕方がないなあ」
そう言いながら自然と顔がニマニマしてきた。
すると、
「ちわーターニャー、いるかー?」
件のリアム(♂、9歳)がお店にやってきた。
「あ、リアム! いらっしゃいませ~。何かご入用ですか?」
「いや、また一緒に剣の特訓でもどうかなってさ……」
「見ればわかるでしょ? 私は仕事中よ?」
いかにも「仕事中です!」みたいな空気を出し胸を張る私。
「そっか、タ-ニャはエライんだな! じゃあまた今度な~」
そう言って去ろうとしたので私は慌てて、
「あ、待って! ちょっとなら大丈夫!」
そう言って、お店の前で剣の特訓をすることにしたのだった。
私とリアムの特訓は、常連の近所のおばあちゃんが “回復のどあめ” を買いに来るまで続いたのだった。




