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調合した毒の蒸気を少し吸っただけで外でぶっ倒れた俺は何とか気をもちなおし、毒気の抜けた部屋に息を止めて再突入した。
鍋に濡らした布をかけてこれ以上気化しないようにし、禍禍しい光を放つ液体を鑑定してみた。
【ゾディアック毒:超ヤヴァイ毒。レジストするには毒耐性Lv15が必要。ドラゴンを殺した伝えられる幻の毒】
まぼろしのどく……。
流石にこれをペロっといく気にはならないかも。
鼻のいいアッシュが危険を察知したのか、外で「やめろ~!」みたいな感じで子ウルフのブルちゃんと二匹並んで吠えているし、これはお蔵入り決定かなあ。
俺はゾディアック毒を大き目のガラスビンに詰め、割れて大惨事にならないよう厳重に封印したのだった。
◆
その翌日。
店はチャトラたちに任せ、昨日作ったコボルトキング素材の装備とゾディアック毒を商業ギルドのボルガさんに見せにいくことにした。
新しい商品を作ったら絶対に持ってきてくれといわれていたからな。
今日はロシナンテ(馬)に一頭立ての馬車を引かせ、のんびり路地を進む。
あーのどかだなあ……。貴族になんかなりたくねーなあ……。
そんなことを考えていたら、商業ギルドに到着。
馬車を厩舎に預け建物の中に入る。
「お、マルゴとサラサじゃん」
商業ギルドに入ると、商品や素材の仕入れに来ているっぽいマルゴとサラサがカウンターに並んでいたので声をかけてみた。
「ケイゴ~」
サラサが俺に向かって手をブンブン振り返して来た。
マルゴは注文の紙か何かをしかめっ面で見ている。
それから俺は二人と軽く雑談しながら順番を待ちながら、書いてきた新作の説明書きを「面白いのできたぜ!」と鼻をこすりつつ二人に見せることにした。
すると、
「××〇〇◆△×!!!」
いきなりサラサが何かを叫びながら両手で俺のシャツ襟をつかみ前後にグイングイン。
マルゴも目ん玉をひん剥いて血走らせながら何かをブツブツ言いだした。
「その毒のビン、カバンに入ってるから揺らすと危ないよ?」
もちろん毒は何の特級呪物かってくらいしっかり封印して家の金庫で厳重に保管してあるので冗談である。
だが冗談でカバンと毒の説明書きを指さしながらそう言うと、二人は物凄い勢いで後ずさり布で口を覆ったのだった。
「あ、いや。冗談だったんだけど」
どうやら二人はバッグに興味深々で俺の言葉は届いていないようだ。
あ~、なんかこれデジャヴだなあ……。
あたりがざわついているのを見かねた職員さんが呼んでくれたのか、厳しい表情のボルガさんとギルド長でサラサ父のアランさんが出てきて、俺たちは無言で奥の別室に連行されたのだった。




