k-245
目力の強い美女の名前はライラお嬢様という方だそうで。
なんとハインリッヒの婚約者だそうだ。
とある伯爵家の娘さんらしく、ハインリッヒの追放により当然婚約破棄……、になるところ、ライラお嬢様が口に出すのも憚れるような大騒ぎをし保留状態に。
そして今回の功績でハインリッヒが家に戻ることを許されたことで、再び結婚話がもちあがった。
ライラお嬢様が伯爵お父様に粘り勝ちしたということのようだ。
ハインリッヒ、こんなに愛されていて幸せだな?
でも愛されている割になんでそんなに青ざめて土下座しているのかな?
ライラお嬢様はライラお嬢様で、阿修羅仁王像のような表情で仁王立ちしているし。
俺のそんな疑問も、二人のやりとりを見ていてすぐに解消された。
どうやらこの男、結婚話が復活したにも関わらずライラお嬢様から逃げ回っていたらしい。
ジルさんが懇願していたのはバイエルン様とのこともあるが、ライラお嬢様とのこともあったそうで。
レスタから追放された後も、ライラお嬢様が定期的に手紙や支援を申し出ていたにも関わらず、変な厨二病を発動させ全てを断っていたらしい。
よくもまあ、これまで愛想を尽かされなかったもんだ……。
最初は強烈だったライラお嬢様も、ハインリッヒに会えたことで張りつめていたものが切れたのか目に涙を浮かべて号泣。
ハインリッヒが青い顔をしてなだめていた。
「あれ……なんだこれ、デジャヴかな……?」
なぜか俺の脳裏に、スキンヘッドの武器屋と美人商人の口から砂糖が出そうなやりとりが妙に頭にチラついたのだった。
どうもこちらの異世界には気性の激しい女性が多いようだな。
ハインリッヒとライラお嬢様の雰囲気がラブラブ度合いを増して、「そろそろお帰り頂いても良いですか?」と言いかけたその時だった。
「ケイゴオクダ!! 〇××!! 〇△ポーション△◆〇!!」
「あ、バイエルン様と……どちら様ですか?」
バイエルン様がヒゲが立派な割には頭頂部の寂しい目力の強いオッサンと一緒に入って来た。
それを見たハインリッヒ、ジルさん、ライラお嬢様が慌てて地面にひれ伏したのだった。
今度は何だ……?




