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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-243

 次の日、町の人総出で南門前に山になっているモンスターの死体の片づけと亡くなった兵士や冒険者の葬式を行うことになった。


 モンスター素材の売却益の多くは、亡くなった兵士や冒険者の家族に支払われることになった。



 こちらの異世界では、戦場には戦神がおり神の使いである戦乙女ヴァルキュリアが戦士の魂を戦神の元へ送ると信じられているそうだ。


 戦争で死者が出た場合には戦乙女に扮した年頃の町娘たちが剣舞を踊りながら死者の棺を先導するのが習わしとのこと。



 ユリナさんから聞きかじったところによると、どうやらギリシャ神話のような多神教の世界観のようだ。



 シャーロットさんを始めとした多くの戦乙女たちが、笛と鈴の音に合わせ剣舞を踊りながら棺とともに町中を練り歩いている。



 町の中にはここぞとばかりに逞しい商売人たちの出店が立ち並び、普段よりも熱気に溢れていた。


 未亡人などは黒のヴェールを被り喪に服しているが、参列者が喪服を着なければいけないという決まりはないようで、町はまるでお祭りムード。



 子狼の里の子供たちも、お小遣いを手渡され出店で買い食いをしたりと大はしゃぎだ。



 戦神に魂を送る儀式というのは、お祭りそのものなのかもしれない。




 最終的に死者の遺体は教会の墓地に埋葬される。


 それを見守るため、俺とユリナさん、ターニャ、アッシュは黒を基調とした喪服を着ていた。



 そんな中、ある女性の黒いヴェールの中から嗚咽が聞こえた。


 お腹が大きく、赤ちゃんを身ごもっているようだ。



 ユリナさんがその女性を見てもらい泣きしている。



 黒いヴェールの女性は確か、“蝶のゆりかご” で一緒に働いていた人で、ついこの間結婚したと言っていた人だった。



 あの人の旦那さん今回の戦闘で亡くなったのか……。


 俺はその女性に何か言葉をかけようかと迷ったけど、結局何も言えなかった。


 こんな時、俺ならそっとしておいてほしいと思ったからだ。




 儀式も終盤を迎えようとしていた。



 ここは魔法が存在するような世界である。



 俺はアッシュの可愛い遠吠えを聞きながら、戦士たちの魂が彼らの言うように本当に戦神の元へ旅だっているのだと、少しだけ信じてもいいと思った。

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