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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-241

「何だこれ……」



 あまりの威力に茫然としていると、



「ケイゴ、ウシロ!!」



 ジュノが俺の背後を指さし叫ぶ。



「うげ」



 後ろを見ると、アーマーリザードに乗ったコボルトキングが物凄い勢いで俺に向かってきていた。


 どうやらグラシエスノヴァを放った俺に狙いを変えたっぽい。


 長い舌を垂らし、鬼のような形相でこちらを威嚇している。


 正直精神恐怖耐性が無かったら、硬直どころか失禁レベルの恐ろしさである。



「これが怖いのかな……?」



 試しに魔力や気力を込めず、牙をコボルトキングの方に向けてみた。



 グガアアアアア!



 するとコボルトキングは乗っていた亀……、ではなくアーマーリザードを蹴り飛ばし横っ飛び。


 ゴロゴロ転がったのだった。



「なんかめっちゃ警戒されてる……」



 この反応だけでも、コボルトキングは相当知能が高そうだ。



 だが、これで敵側に隙が生じている。



「この隙に全員陣形を整えろ!!」



 ポーションでの回復や乱れていた陣形を整える遊撃部隊と前衛中央部隊。


 俺もポーションで尽きかけていた魔力と気力を回復した。



 ……おそらく直感だけど、コボルトキングがこれだけ牙を警戒しているということは、スキルを当てることができれば倒せそうだ。



「問題はスキルを警戒されていることだが……」



 俺はこちらを睨むコボルトキングを観察しながら、自分にバーニングマッスルとストーンスキンをかけてステータスの底上げをする。


 おそらく普通にぶっ放したとしても避けられて終わりだし、横向きに撃つと下手すれば射線上にいる仲間を巻き込む恐れもある。



 何かいい方法は……。



 すると視界の隅に影がチラつくのを見て閃いた。



 敵に隙がないなら作ればいい。



「まあ、普段なら絶対に御免被りたいとこだけどな」



 俺はヘルファイアソードを抜いて、コボルトキングに向かって走りだした。



 俺の行動を予想していなかったのか、コボルトキングは慌てて立ち上がりバトルアックスを俺に向けて横なぎに振った。



 それに対しスライディングで下をかいくぐる俺。


 衝撃波だけでダメージをいく分か食らった。


 ストーンスキンがなければ、これだけでもかなりの痛手かもしれない。



 だがこれはチャンスだ。



 その瞬間、先ほど影をとらえたブルーウルフたちが一斉にコボルトキングに飛び掛かった。


 もちろんブルーウルフがコボルトキングを倒せるとは思わないが、これで注意はブルーウルフに向かったはず。



 しかもコボルトキングはバトルアックスを大振りしたばかりで、懐ががら空きだ。



 俺はこのタイミングでコボルトキングの懐に飛び込むと、牙に最大出力で魔力と気力を込めた。



 ……うまくいってくれ。



 その時なぜか走馬灯のようにユリナさん、ターニャ、アッシュ。そしてレスタで関わってきたみんなの顔が次々浮かんだ。



 そしてそれが俺に勇気をもたせてくれた。



「うおおおおおおおお!!!!」



 俺は声の限りの雄たけびを上げ、コボルトキングの腹に高エネルギで振動する牙を斜め下から斜め上へと突き立てた。



 その瞬間、牙から光が放出され、物凄い音、光、衝撃が俺を襲ったのだった。




 ……どうなった?



 どうやら俺は、一瞬意識が飛んでいたらしい。


 だが意識を取り戻したものの、キーンという耳鳴りと白濁した視界で状況がつかめない。


 手には握りしめた牙の感触がある。


 どうやら光と音によって視界と聴覚がふさがれているようだった。



 だがそれもやがて、周りの歓声とコボルトキングのデカイ図体に切り替わっていった。



『個体名:奥田圭吾はLv24になりました。体力53→56、魔力51→54、気力49→52、力54→57、知能96→98、器用さ61→64、素早さ54→58』


『個体名:奥田圭吾はLv25になりました。体力56→59、魔力54→58、気力52→55、力57→60、知能98→101、器用さ64→67、素早さ58→61』


『個体名:奥田圭吾はレベル26になりました。体力59→62、魔力58→61、気力55→58、力60→63、知能101→103、器用さ67→70、素早さ61→64。グラシエスノヴァLv2、精神恐怖耐性Lv2を取得しました』



 機械的な音声とポップアップした画面が目の前に現れた。



 視線をずらすとコボルトキングがまるで弁慶のように微動だにせず存在していた。


 だがレベルアップしたという事実が、目の前の化物を倒した証明でもある。



「倒せた……」



 俺のその言葉を聞いたのかそうでないのか、後ろから戦を見ていたジュノがコボルトキングに近づき死んだのを確認して……、



「コボルトキング、×〇△!!!!」



 鬨の声をあげたのだった。



 するとその声に仲間が呼応し、コボルトキング討伐の情報は瞬く間に戦場全体に広がったのだった。

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