k-230
新しい従業員がやってきたことで、お店の大部分を任せられるようになった。
なので、このタイミングで体力が回復してきた子供たちが何か笑顔になるようなことをしたいと思った。
雪に子供が喜ぶイベントといえばクリスマスパーティがいいだろう。
みんなでワイワイ飾り付けをして料理を囲んで歌を歌ったり、プレゼント交換をする。
そんなのは日本中のどこにでもありふれたものだけど、生きることに必死なここでは貴重なもの。
現実には嫌なことが沢山あるけど、まだまだ世の中捨てたもんじゃないでしょ? と見せてあげるのが、俺たち大人の責任なんじゃないかと思ってる。
この世界の住人はイエスキリストを知らない。だけどイベントに名前を付けて楽しむのは自由だろう。
いつの頃からか突発的に発生し、毎年の恒例行事となったハロウィーンみたいな。
だから俺は、皆に「クリスマスパーティをするから、準備をしよう」と言った。
最初は「クリスマス?」と怪訝な顔をしていた子供たちも、中身を知ると目を輝かせ「パーティ? プレゼント買ってきてみんなで交換するの? やったー--!!」と大はしゃぎ。
銀貨を握り締めて町へと繰り出していったよ。
開催場所だけど、まだ里にはテイラーさんの建物ができていない。
エルザの宿屋を借りようとも思ったけど、何日も準備してみたいなのは営業に差しさわりがありそうだと断念。
なので、里にある広場にレスタ兵士団から軍野営用の巨大天幕を借りて張り、焚火をしつつやろうということになった。
これに幌馬車用の薪ストーブをとりつければ、中はかなり温かくなるだろう。
主役の子供たち以外では、手伝いのギルドの人たち、ジョニーたち、俺、ユリナさんがメインとなって準備を。
ドニーさんの部下たちが巨大天幕の設営してくれた。
うちの従業員たち、サラサたちも仕事の合間に手伝ってくれた。
準備が進む中、会場には子供たちが作った雪ダルマがいくつもならんでおり、頭には赤い手編みの帽子とマフラーがつけられていた。
これは編み物が得意なユリナさんが子供たちに教え、子供たちが作ったものだ。
それらしくなってきた。
そうして、子供たちが待ちに待ったクリスマスパーティがやってきたのだった。




