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雑貨屋を経営しながら全く別の事業なんてできるかな? なんて少し不安だったけど、他の人に手伝ってもらえば意外になんとかなるもんだ。
テントを張るのも食事を作るのも、店先で接客するのも、何も全てを自分でやる必要はない。
店の売り上げの中から給料を払って人を雇い、働いてもらう。
「子狼の里」プロジェクトは何かを売っているわけじゃないので売り上げはないけど、バイエルン様他のカンパがあるので、そちらを人件費に回すことができる。
人手の無償供与もあるので、それと合わせればなんとか回すことが出来そうだ。
でもいずれは子狼の里の方でも、何か自分たちでお金を稼げるようなことをしたいと思っている。
ビジネスや投資の世界でも、「魚を与えるより魚の釣り方を教えろ」と言うことがあるけど、まさにそれ。
日本の義務教育ではお金の勉強がほぼなく、子供は親から与えられる食事やお金を当たり前のもの、大して苦労なく稼げるものであるかのように錯覚したまま大人になってしまうように思う。(今は違うのかもしれないけど、少なくとも自分の時には)
お金を稼ぐことがどれだけ大変なことなのか。
そんなことも知らないまま大人になるもんだから、奨学金が借金だということすら認識しないまま、「数百万円の借金を背負って社会人デビュー」なんてハメになるのだ。(新社会人の手取りなんてだいたい月20万円くらい。そこから残ったお金で返済するとして一体何年かかる? という話だ)
つまり、子狼の里で保護した子供に本当に必要なのは「魚」ではなく「魚の釣り方」=お金の教育である。
四則演算・読み書きを教えた後、金儲けの基本の基「安く仕入れて高く売る」。
これを教える。
その発展形として、「売り物を自分で作って売る」、「お金を誰かに貸して利息で儲ける(=投資)」を覚えてもらう。
例えば薬草採ってきてポーションにして売る、とかな。
そのような方針で教えれば、今の悪い大人が教えた「他人の物やお金を力づくで奪い(スリをして)生活する」という負の状況から脱出することができるんじゃないか。
現状商業ギルドから無償で人を派遣してもらっているので、教師役もなんとかなる。
だけど、それは今すぐというわけにはいかなかった。
里で保護した子供は、厳しい冬の寒さと飢えで体調の悪い者がほとんどで。
まずは食事と休養、場合によっては病気の治療が必要だ。
治療に必要なポーションを仕入れに頼ると予算がもたないので、自分で作りまくっていたら、錬金術のレベルが10まで上がってしまったよ。
あと治療といえば、町医者のキシュウ先生が診療の合間に里の方に来てくれるようになった。
結構危ない状態の子供がいたけど、キシュウ先生のおかげで助かった。
俺も勉強になるので、キシュウ先生が来ているときは、彼の技術を目で見て覚えるようにしている。
そんなふうに毎日試行錯誤を重ねつつ活動していたら、里で保護した子供の数は気が付けば20人を超えていたのだった。




