(モノローグ・ユリナ)TA・N・SA……N!? ぱーと2
夫がお店の工房にこもっている。
何かを作ると言っていたけどさっぱりわからないわ……。
「私はおねえちゃんなんだから、アッシュが先にお肉を食べるの!」
「ワン!」
最近スラムで暮らすターニャという倒れていた少女を保護したんだけど、ここ最近はずいぶんと元気になっていた。
冬に常備してあったキシュウ先生の風邪薬が効いたみたい。
ターニャは食欲も出てきたようなので、夫がシカの生肉から作った自家製干し肉をあげてみたら、アッシュと「取り合いの逆」をはじめてしまった。
干し肉の入ったお皿を挟んで、口元をヨダレで濡らした二人のにらめっこは続く。
「か、かわいいわ……」
はうっ! となった私は思わず二人を抱きしめて頬ずりしてしまった。
「ユリナ、くるじい……」
「クーン……」
それから私はお皿に乗った干し肉を半分に割って、ターニャとアッシュの口に放り込んであげたのだった。
私は夫と一緒にお店をはじめることにした。昔から可愛いものが大好きで、ママやお店の得意な子から裁縫や刺繍を習っては、ぬいぐるみとか可愛いものを作っていた。
いつかそういう可愛いものを売るお店をしたいと思ってたんだけど、急に夢が実現してしまったわ。
そのお店も商売上手な夫のおかげで順調そのもの。二人の従業員を雇うこともできた。
その従業員の歓迎会で、夫はまたとんでもないものを出してきた。
夫はそれを「スパークリングワイン」と呼んでいたのだけど……。
ゴク……。シュワシュワ……。
ドドーン
私の背後に、黄緑色の稲妻が轟いたのだった。これいつぶり? ウニの刺身以来?
それともサーペントの蒲焼?
でもそんなのどうだっていいわっ!
それから私は異常に美味しい飲み物を堪能した。
というかしすぎてしまった。
バイエルン様が目の色を変えていらっしゃるから、私が普通に手に入れるのは無理だと思うけどそこは妻の特権。
こっそり夫にお願いして、ママやお店のみんなにも飲ませてあげようっと。




