(モノローグ・マルゴ)TA・N・SA……N!?
ハインリッヒに追われ逃げていたケイゴがレスタの町に帰ってきた。
50人以上の手勢がケイゴたちを追っていると聞いていたので心配していたが、どうやら大丈夫だったようだ。
ケイゴの無事な姿を見て、内心ほっとした。
俺はケイゴの肩を抱いて喜んだ。
そしてその日は、蒼の団を全員で盛大な打ち上げをしたのだった。
◇
捕らえられたハインリッヒは、結局レスタの町を追放されることになった。
ところがある日、ケイゴの家にファイアダガーを受け取りに行ってみると、ハインリッヒがいやがった。
「何を考えていやがる! バカヤロウ!!」
俺はハインリッヒを見た瞬間キレた。
だがケイゴは落ち着けとジェスチャー。
俺は深呼吸をして、何とか気を静める。
「確かにお前が一番の被害者だがよ……」
ケイゴが良しとするのなら、コイツに任せてみるか……。
その日、ケイゴからハインリッヒ同席の宴会に誘われたが、とてもではないが一緒に酒を飲む気にはなれなかった。
◇
ハインリッヒがケイゴの家を去りタイラントに行ったそうで、俺は内心ほっとしていた。
そして驚いたことがもう一つ。
あのケイゴがレスタで店をやりたいと言い出したのだ。
俺は勿論賛成した。
むしろユリナと一緒になったことだし、危険なモンスターだらけの町の外よりも町の中の方にいた方が良いと思ってはいた。
だけどそれは余計なおせっかいというもので、俺はあいつがそう言い出すのを待っていたんだ。
ユリナさんと一緒になったケイゴを見て、伴侶の力は偉大なんだとつくづく思った。
俺もイザベラやサラサから受けた影響は計り知れないから、よくわかるぞ?
そんなこんなで、ケイゴの出した雑貨店「子狼のまえかけ」完成の日を迎えた。
何というか、ケイゴらしいセンスのある店構えだと思った。
ユリナさんやアッシュをも可愛い看板の一部に見立てているのが素晴らしい。
この店はきっと流行るだろう。
◇
ケイゴがマヤとチャトラという商人見習いを雇った。
その歓迎会に及ばれしたときのこと。
ケイゴの家に着くと見知らぬ少女がいた。
どうやらその少女はケイゴの店の前に倒れており、拾って面倒をみているらしい。何ともケイゴらしい。
だがそんなことはどうでもいい。
問題は目の前の泡を立てているこのブツだ。
それを一口飲んだ俺の頭に人生一番の衝撃が走ったのだ。
シュワシュワ……、ドドーン!!!
俺の頭に黄緑色の稲妻が轟いた。
ケイゴといると、青だの赤だの種類の違う稲妻が頭に轟くので本当に飽きがこない。
「ケイゴ!! 相談だ、これを1ビン金貨20枚で俺に売る気はないか?」
「はあ? あんたまた利益を独り占めする気? ケイゴ!! 私は金貨30枚だわ!!!」
「フフフ……、ケイゴオクダ。吾輩は貴族連中に伝手があってね、そんなはした金など吹き飛ぶ金額を君に約束しよう……。そこで相談なのだが」
頭に黄緑色の稲妻が轟いたのは俺だけではなかったらしく、ライバル多数。
だがここで引いては商人ではない!!
そこからはサラサとバイエルン様を相手どり、普段は取り繕うはずのマイルドな表情もかなぐり捨てた、必死の舌戦が繰り広げられることになったのだった。




