k-221
「じゃあ、チャトラとマヤの入社おめでとう、乾杯~」
「「「カンパイ~ ‘‘ニューシャ’’ オメデトウ~」」」
こちらの世界に株式会社はないので「入社」という言い方はしないだろうけど、お店とかギルドのような組織はあるので、そこで働き始める意味だ、くらいに皆には説明しておいた。
「ムオオオオ!!」
「ヌゴオオオオ!!」
「イヤアー-!」
そんなことを思っていたらバイエルン様、マルゴ、サラサの三重奏。
どうやらスパークリングワインを飲んでの反応のようだ。
まあ、そりゃ驚くわな。
ターニャとアッシュもシュワシュワしたルミーソーダジュースを飲んで喜んでいたよ。
可愛いコンビを眺めて和んでいると……。
「ケイゴ!! 〇×△、◇〇×? ××〇〇△!!!」
「×〇、〇〇◇、△△!! ウッテクレ!!! ××、金貨20枚!!」
「××!! ケイゴ!!! ×〇△◇!!! ×◇〇、金貨30枚ヨ!!!」
バイエルン様、マルゴ、サラサの3人がすんごい剣幕て詰め寄ってきた。
「あー、すまん。何言ってるかわかんない」
そう言いながら、わかんないのジェスチャー。
スパークリングワインがハイパーインフレ起こすだろうってのは予想してた。筆談でのスパークリングワインの買い取り合戦が始まりそうな気配だ。
うーん、今日はチャトラとマヤの歓迎会なんだが……。
と思ったら、儲け話にチャトラとマヤが目を輝かせていたのでこれはこれでアリか。
「マヤ、このスパークリングワインとルミーソーダジュース、ボトル一本いくらで売るかの交渉やれるか?」
「カシコマリマシタ、ダンナサマ」
俺は試しに商売の交渉を教えたマヤにOJTを施すことにしたのだった。
後ろからマヤの交渉を見ていたが、それなりに頑張れているようだった。
今回は貴族にパイプのあるバイエルン様も交えての交渉になるので、貴族価格を考えての価格交渉になった。
最終的に百戦錬磨のサラサとマルゴの交渉術に押され、二人にも卸すみたいな話になりかけてしまったので、流石にストップをかけた。
「すまんが、これは魔力を消費するからそんなに量産できない。うちの店の目玉商品として限定販売にするよ」
「「「!!!」」」
俺がそれだけ言うと、またスパークリングワインのハイパーインフレが継続してしまった。
うん、やっぱ世の中需要と供給で商品の価値は決まるよなあ。
グラスの中にあるスパークリングワインが急にロマネコンティに見えてきたよ。
それから俺は後の交渉はマヤに任せ、目を血走らせて舌戦を繰り広げる4人を呑気に眺めることにしたのだった。
「あれ? なんか忘れてないか?? ……、まあいっか」
一瞬何かを忘れているような気がしたが、気のせいかと考えるのは止めにした。
現在ロマネコンティと化したスパークリングワインはボトル一本金貨300枚までハイパーインフレ中だ。
まあ、本数を作れば価値は下がるんだけどな。
そんな感じでチャトラとマヤの歓迎会とは名ばかりの狂熱と狂乱のワインオークションは大いに盛り上がったのだった。
なお、さきほど忘れている気がしたのはやはり気のせいなんかじゃなく、後日アランさんとボルガさんが商業ギルドの威信をかけて猛抗議に来ることをこの時の俺は全く考えていなかった。
が、それはまた別の話である。




