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「スパークリングワイン」と「炭酸ジュース」を作ることが出来たので、新入社員歓迎会も兼ねて宴会をすることにした。
店のメンバー以外にも、サラサ、マルゴ、エルザ、ジュノ。あとは「美味い物を新しく作ったときは必ず声をかけるように」と口を酸っぱくして言われているバイエルン様にも声をかけた。
食べ物の恨みは恐ろしいと言う。
炭酸みたいな画期的に美味い物を黙っていたとバレれば、後から何を言われるかわかったものではないからな。
店の前で倒れていたターニャはすっかり回復し、住み込みでお店の手伝いをしてくれている。
アッシュと一緒に並ぶと本当に微笑ましい可愛さだ。
行き場のないターニャを押し出すのは自分の良心的にないし、ユリナさんも可愛がっており、そんなことは許さないだろう。
余裕がないなら自分たちの生活を優先しなければいけないけど、ありがたいことに店を経営し生活するだけなら十分すぎるほど稼ぐことができている。
助けることができるのなら、手を差し伸べるべきだろう。
ということで、俺とユリナさんはターニャが自分で自立できるまで面倒を見ることにしたのだった。
ユリナさんはとても教育熱心で、ターニャとマヤに仕事の合間を見て、裁縫や戦闘のてほどきをしていた。
スリングショットの訓練については、彼女曰く「女こそ自分の身は自分で守れるようにすべきよ!」とのこと。
女性陣が案山子の頭に次々と麻痺弾を炸裂させているのを見た俺は、この店を襲うかもしれない未来のゴロツキさんに同情せざるをえないと思ったよ。
そう思ったその日に、店に強盗というか「誰の許可を得て仕事してるんじゃい!」的などちらかというと893屋さん的な営業妨害にこられたパンチパーマのチンピラがやってきた。
「はあ」
いやこの町の貴族と商業ギルドの許可もらってるけど? と思いつつポカーンとしていると。
「マヒクモ!!!」
「「ハイ!!」」
ばふぉ! どちゃ! バキ!
ユリナさんが射撃の号令をしたかと思うと、女性陣が麻痺弾、蜘蛛糸弾、鉄の塊弾を斉射。
893屋さんの顔面に全弾クリティカルヒットしてしまった。
倒れた893屋さんは、足と腕をぴくぴくさせながら気を失っているようだ。
お、恐ろしい……。
それから縄で縛り上げられた893屋さんは、しばらくしてやってきた兵士長のドニーさん(丁度今晩の宴会に参加するとのバイエルン様の返事をもってきた)に連行されていったのだった。
犯罪者をつかまえたということで女性陣には銀貨数枚の報奨金が出て、3人のテンションがめっちゃ上がっていたよ。
こわやこわや。
そんなアクシデントもありつつ、宴会の準備もあるので早めにお店を締めた俺たちは新入社員歓迎会兼炭酸お披露目会の準備に取り掛かったのだった。




