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家の前に一人の金髪碧眼の少女が倒れていた。
ずいぶんとやせ細り、衰弱している。熱もあるようだ。
俺は少女を抱き上げ、そのあまりの軽さに驚いた。
マヤにユリナさんを呼んできてもらい、俺とチャトラで女の子を家の中に担ぎ込んだ。
2階のベッドに少女を寝かせると、手元にあった回復クッキーを食べさせつつ、デュアルポーション(中)とパルナ解毒ポーションを飲ませてあげた。
俺も風邪をひいたとき、ポーションでなんとか治したからな。
そこへユリナさんがやってきて、「少女の看病を代わりにやるから、お店をお願い」と言われた。
確かに体ふいて着替えさせたりとかは、ユリナさんがやった方がいいか。
「じゃあユリナさん、俺たちは下にいるから何かあったら言って」
あまり騒がしくないほうが、少女も眠れるだろう。
ユリナさんと心配そうに少女を見つめるアッシュを寝室に残して、俺は従業員二人を連れて店の方に戻ったのだった。
それから俺はチャトラとマヤに一通り店の中や商品、仕事の流れを説明していった。
二人は飲み込みも早く、これなら少女の看病をしながらでも店を開けられるだろう。
まだまだ完全に教えられたわけではないが、それはOJTで何とかすればいい。
「昼飯はその日の料理当番が調理場にある材料で人数分つくること。休みは二人で相談して被らないように調整、勤務表を30日区切りで俺に提出すること」
そう説明したところで日が落ちたので、この日の営業は終了。
チャトラがドアにかかっている板をCLOSEにひっくり返したのだった。
二人は今はまだ実家暮らしだが安定した収入がもらえるようになったので、部屋を借りるつもりだと言っていた。
「今日はおつかれさん。明日もよろしくな」
「「アリガトウ! ヨロシク! サヨナラ!」」
店の戸締りを終えた二人はランカスタ語で礼とさよならを言い、帰って行った。
そう言えばランカスタ語なんでよくわからなかったけど、二人はちゃんと敬語を使っているんだよな?
今まで敬語を使ってもらわなければいけないシチュエーションもなかったから。
でも、その辺りはきっちりさせねば。
従業員が社長にタメ語使う会社とか、普通にないからな。
「……腹減ったな」
それから調理場で刻んだパスタをスープで煮込んでやわらかくした療養食を作った俺は、温熱ポットで作ったホットワインと一緒に、二階へもって上がったのだった。




