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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-214

 注文を受けた「回復クッキー」の入った木箱をもって、冒険者ギルドに顔をだした。


 受付カウンターには冒険者の相手をしている事務係のダンと、冒険者から提出された山のようになっているモンスター素材を吟味するハン先生の姿があった。


 注文主であるハン先生は俺に気がつくと、「ついて来い」のジェスチャー。


 体力だけではなく、気力・魔力も回復するクッキーはスキルや魔法を指導する上でかなり重宝されているようだった。




 ハン先生について行き入った書斎は、如何にも魔法使いの部屋という様相を呈していた。


 薄暗い蝋燭明かり。


 呪術に使われるような道具がそこかしこに置いてあり、部屋中に鼻をつく、すえた臭いが充満している。



 ハン先生が「ここに箱を置け」とジェスチャーした場所に木箱を置いて配達完了。


 そして帰る前に軽く雑談したところ、魔法の話になった。(筆談である)



 ハン先生曰く「闇属性が便利」とのことで、「ドミネーション」なる魔法を実演してくれることに。



 ハン先生はケースの中から一匹の赤いネズミを取り出しテーブルの上に置き、手から黒い靄のようなものを出した。


 すると歯をカチカチと鳴らし攻撃的な様子だったネズミの目がトロンとなり、体をゆらゆらと揺らしだした。


 ハン先生が指を指揮者のように動かすのに従って、まるで操り人形のようにネズミが踊り狂い、そしてまるで糸が切れたかのように動きを止めたネズミは死んでいた。



 ハン先生は足りないスキルポイントの代わりに、お金で支払ってくれればいいと言った。


 確かに他人を操る魔法は便利なのかもしれないけど、なんかちょっと嫌だな……。


 日本人としての倫理観がそう思わせているだけなのかもしれないけど、マインドコントロール的な?


 ということで、俺はその不穏な魔法の取得を「お金がないです……」と無難な理由をつけて固辞させてもらった。



 ハン先生は少し残念そうに顔を歪めたが、「気が変わったら、いつでも来い」とジェスチャー混じりで言い、俺は冒険者ギルドを出たのだった。

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