k-199
温泉の町ホワイヨを出発してから一か月くらいの旅を経て、ついに俺たちはレスタの町に到着した。
「なんだか、ずいぶんと懐かしい気持ちになるな」
あの光の玉のメッセージはフェイクで、実はサラサがハインリッヒに無理矢理打たされていた……、なんて杞憂か。
町に近づいても、変わった様子もない。大丈夫だろう。
レスタの町につくと、門衛のおっちゃんが俺たちを見てギョッとして、大きく手を振ってくれた。
そのまま門を通過しようとしたら、門衛さんがドニーさんを見て感涙していた。
そう言えばドニーさんが兵士長ってことは、門衛さんの元上司ってことになるもんな。ドニーさんは相当人望が篤いようだ。
それからマルゴの店に直行した。ドニーさんとはバイエルン様のところに行くと言って、門前で別れた。
通いなれた道がやけに懐かしく感じる。
馬車をマルゴの店の横にとめた後、ユリナさんとアッシュを連れてマルゴの店のドアを開けた。
チリンチリンとドアベルが鳴る。
おお、揃ってる揃ってる。俺は友人たちの顔を見渡しこういった。
「みんな、ただいま」
するとマルゴ、サラサ、ジュノ、エルザの全員が泣き出したかと思うと、笑顔を浮かべたりと百面相をはじめ、俺たちに抱きついた。
サラサやエルザなんかはアッシュをとりあってクルクル回っていた。アッシュ、いい迷惑だな。
何でも門番のうちの誰かが、俺たちが門の所で足止め食らっている隙に、マルゴたちに伝えてくれたらしい。
――やったな!
――ああ!
マルゴやジュノと表情と仕草だけで、そんなやりとりをした。
どうやってあのハインリッヒを倒したのか、話を聞きたいところだが……。
「とりあえず、ヘトヘトなんだ。ゆっくりエールか何かでも飲みながら話さないか?」
俺がジェスチャー混じりでそう言うと、全員が頷いたのだった。
そしてその日は、エルザの宿の食堂を借り切って宴会になったのだった。
お疲れ様会には俺たちの他、ハインリッヒ打倒チームに加わってくれたメンバー(蒼の団というチーム名らしい)、ユリナさんを保護し育ててくれたパブのママやお姉さんたちが参加した。
そしてユリナさんは。
「ユリナ!」
「ママ!」
とママの大きな体に抱きついた。するとママの相好が崩れ、目にキラリと涙が光っていた。
ユリナさんとママはずっと何かを語り合っていた。ランカスタ語のやりとりは俺には解らなかったが、それは家族の雰囲気そのものだった。
なのでユリナさんと家族になった俺も、その輪に加わることにしたのだった。
それから久しぶりのドンチャン騒ぎを楽しんだ俺は良い感じに酔いつぶれ、エルザが用意してくれた部屋のフカフカのベットにダイブすると、そのまま意識を手放したのだった。




