蒼の団2
場所はバイエルンの邸宅前。邸宅はハインリッヒの兵士により厳重に警備がされている。
そこへ美しい夜の蝶たちが酒瓶とグラスをもってコート姿で現れる。歓楽街のママが酒樽の乗った荷車を門前でとめると、門番の兵士に挨拶をする。
「兵士さん。こんな遅くまでご苦労さんだね。こいつは、私たちの店からのプレゼントさ。たまには、息抜きも必要だよ」
「いや、我らは職務中なのだ……」
しかし、すぐに兵士たちの理性という頑強な要塞は木っ端微塵に砕かれた。
お姉さんたちがコートを脱いだのだ。
ボン・キュッ・ボン!
兵士たちの鼻の下がデローンと伸びまくる。
「そうだな、うむ。たまには息抜きも必要だ。邸宅の中で酒盛りをする分には大丈夫だろう」
兵士たちは夜の蝶たちの肩を抱きつつ、バイエルン邸に招き入れたのだった。
……
邸宅前の雑踏の影に、蒼いブレスレットをつけた男たちがひっそりと隠れていた。
バイエルン救出作戦の実行部隊。ジュノを筆頭とする冒険者たちである。
酒樽を邸宅内に入れたママが、雑踏の影から見守るジュノ、冒険者たちの元へとやってきた。
「コードネーム『TSUTSUMOTASE返し』の状況は?」
ジュノが歓楽街のママ、ジョセフィーヌに問う。
「驚くほど順調さね。中庭ではキシュウ特製の睡眠薬入りとも知らずに、娘たちにデレデレになった兵士たちが酒盛りを始めているよ」
女たちが持っていた酒瓶や運び入れた酒樽の中には、サラサが町医者のキシュウから手に入れた『睡眠薬』が入れられていたのである。
そしてしばらくすると邸宅の門から一人の女が出てきて、ブレスレットのついた右手を上げた。
ゴーサインである。
雑踏の影から飛び出した『蒼の団』の男たちは、静かにバイエルンの邸宅内に侵入したのだった。




