モノローグ・ハインリッヒ3
フフフ。
私は次々ともたらされるケイゴオクダの足取りに関する報告書を読みながら、眼鏡を右手の中指でくいと上げた。
そこには……。
『ドニーは現在、タイラントからブラー川沿いを川下に向かって移動中』
と書いてあった。
私が何の理由もなく、ドニーを殺さずに町を追放するわけがない。
ドニーめ。泳がされているとも知らずに全く馬鹿なヤツだ。
ドニーには旅の行商人に扮した手下を張り付かせている。ドニーはケイゴオクダと仲の良かった者どもの支援を受けて、ケイゴの元へ向かったとのこと。
つまりドニーを監視していれば、勝手にケイゴオクダの元に案内してくれるというカラクリだ。
ジルの騎兵部隊はタイラントの町に待機させていたが、ドニーの現在地を考えベイリーズ市に先回りさせることにした。
フフフ……。
私が『金の成る木』を手に入れる日は近い。私は、部位欠損ポーションを大金で買い漁る貴族どもと、金貨の山を夢想し。悦に浸る。
金は力だ。
私はレスタの町の一貴族で終わるつもりは毛頭ない。その金で一大兵団を築き上げ、貴族社会でのし上がろう。
ユリナを人質にとり、ケイゴオクダの力を利用すればそれが現実に可能となるだろう。
夢が現実になる瞬間がすぐ目の前に迫っているのがわかる。
私は、このくだらないチェイスゲームに間もなくピリオドが打たれることを確信したのだった。




