k-182
あまり河原に長居するのもよくない。一応追っ手の心配もしないといけないだろう。
そう思った俺は、河原で属性石を馬車に積めるだけ拾ってから出発することにした。
材料さえあれば作業はどこだってできるからな。
ユリナさんも手榴弾の材料になりそうな松ぼっくりのような質感の乾燥した木の実を拾っていた。
手榴弾作りの蜘蛛爆薬がなくなってきたので、パープルタランチュラを探さなければいけないのが少し面倒だ。
本当はギルドに討伐依頼とかできれば良いんだけど、今はそれもできない。
だがこの先はかなり木の茂った場所を通らなければいけないので、もしかするとパープルタランチュラと遭遇できるかもしれない。期待しておくとしよう。
川沿いの道をしばらく馬車で進んでいると、どんどん森深くなってきた。太陽の光がほとんど届いていない。
するとユリナさんに抱っこされていたアッシュの耳が急にとんがり、上空に向かって唸り出した。
「今度はなんだ……」
俺はヘルファイアソードを抜いて警戒する。ユリナさんも左手に盾、ポケットから手榴弾を取り出し右手に持っている。
すると上空から木の葉をつん裂き何かが急降下してきた。
俺は咄嗟に構えたヘルファイアソードから火球を飛ばした。
するとその何かは火球を回避して再び上空に戻りホバリング。
「鷹? いやデカすぎんか?」
【ファントムバード:大型の鳥モンスター。鋭い爪で大型の動物を鷲掴みにして捕食する。羽根には射出機構があり、羽を矢のように飛ばして攻撃する。射出攻撃にはウインドが有効】
うげ……。何か飛ばしてくる系のやつですか。
鳥モンスターを鑑定しているとブルーウルフが3体俺の近くに寄ってきた。
そうこうしていると、ファントムバードは体に力を込め出した。いかん。
「羽飛ばしてくるぞ! ウインド!!」
俺は全力のウインドを敵に向かって放つ、それと同時にパン!! という爆発音とともに大量の羽が射出された。
ウインドの突風と羽攻撃がぶつかり、軌道がそれた。毒のように逆流とまではいかなかった。
羽攻撃が効かなかったのが気に食わなかったのか、再びファントムバードが俺めがけて急降下。
しかし、その脇腹にブルーウルフの一体が体当たり。
「エイ!!」
そこにすかさずユリナさんが手榴弾を投げた。
パン! と乾いた音を立てて破裂した手榴弾から灰色の蜘蛛糸が広がりブルーウルフもろともファントムバードに絡みついた。
「いいぞ! ユリナさん、もうイッパツマヒ!」
「エイ!!」
掛け声と共に糸が絡みついて地面で暴れるファントムバードにむけて手榴弾を投げるユリナさん。
ファントムバードの首のあたりに命中して破裂。
ファントムバードは破裂した麻痺弾の煙を吸い込み、ピクピクと痙攣し動かなくなった。
一緒にもつれていたブルーウルフも巻き添えを食らったけど、しばらく動けなくなるだけなので大丈夫。
むしろ毛に絡みついた蜘蛛糸をとる方が大変そうだ。
「よくやったね、ユリナさん。とどめを一緒に刺すよ」
そして俺たちは、一緒にヘルファイアソードを持ってファントムバードにとどめを刺した。
『個体名:奥田圭吾はレベル21になりました。体力46→48、魔力42→45、気力41→42、力48→49、知能89→90、器用さ52→54、素早さ48→49。ウインドLv5を取得しました』
そして4レベルだったユリナさんはレベル7となり、投擲スキルがレベル2となったようだ。
ポップアップ画面を見て喜ぶユリナさんがとても可愛いらしかった。




