k-179
マーマンを解体して食材を確保した俺は、特にやることもないので昨日発見した鉱石を使って実験をしてみることにした。
鉱石はこの二つだ。
【緑耀石:風属性の魔力をもつ鉱石】
【黄硬岩:地属性の魔力をもつ鉱石】
属性をもつということは、火炎石の親戚のような感じだろうか。火炎石はフェムト石を砕いた研磨剤と合わせることで火炎研磨剤になった。
つまりこの工程が同じようにできるのではないかという推測が立つ。
なので同じように作業してみることにした。
俺は荷台の袋からフェムト石を取り出し金床とハンマーで粉々にする。そうしてできた研磨剤を緑耀石、黄硬岩をそれぞれ砕いたものと混ぜ合わせてみた。
それを鑑定してみると緑耀研磨剤、黄硬研磨剤と出た。
緑色をした緑陽研磨剤からは微かにだがウインドを使う際と同じ力を感じる。黄色い黄硬研磨剤からも、感じたことはないが別種の力を感じる。
そして研磨で試すといえばお馴染み劣鉄製ダガーだろう。俺はダガーを2本取り出し、二種類の粉それぞれで研磨してみた。すると……。
【ウインドダガー:風属性が付与された劣鉄製ダガー。素早さ+3補正、重量10%軽量補正】
【アースダガー:地属性が付与された劣鉄製ダガー。硬度=攻撃力にプラス補正】
と出た。同時に緑耀研磨剤、黄硬研磨剤の鑑定結果も変化した。
緑耀研磨剤は武器防具に素早さプラス補正と重量軽減補正を。黄硬研磨剤は武器防具に硬度プラス補正を付与し、攻撃力や防御力を底上げする効果があることがわかった。
「なるほどねえ……」
そこで俺はちょうど作りたいものがあったことを思い出した。
それは最近戦闘に参加してくれているユリナさんのために武器防具を作ることだった。非力な女性でも装備できるようなものでなければいけないが、そうなると防御力に不安が残る。
そこでこの二つの属性付与の効果だ。魔法で攻撃力や防御力を高め、重量を軽減するなんてまさにうってつけじゃないか?
俺は試しに、ウインドダガーをさらに黄硬研磨剤で研磨してみた。しばらくすると微かに黄色っぽい色にダガーが光った。
今までの経験上おそらくこれで完成だ。ダガーを鑑定してみると。
【ウインドアースダガー:風属性と地属性が付与された劣鉄製ダガー。素早さ+3補正、重量10%軽量補正、硬度=攻撃力にプラス補正】
なるほど。つまり一つの武器に属性は一つしか付与できないということでもないようだ。
火属性と水属性を合わせると雷属性になったことを考えると、両立する属性ではどうやらいけるっぽい。
「じゃあ、これをユリナさんの革の防寒具に付与すれば……」
俺は防寒具を脱いで編み物をしているユリナさんに声をかけ、防寒具を受け取った。
そしてそれらをブラシに緑耀研磨剤、黄硬研磨剤をふりかけ、丹念にブラッシングしてみた。
するとユリナさんの防寒具が緑色と黄色の光を放った。鑑定してみると、
【ウインドアースレザーシューズ:風属性と地属性が付与された革靴。素早さ+3補正、重量10%軽量補正、硬度=防御力にプラス補正】
【ウインドアースレザーグローブ:風属性と地属性が付与された革手袋。素早さ+3補正、重量10%軽量補正、硬度=防御力にプラス補正】
【ウインドアースレザーハット:風属性と地属性が付与された革帽子。素早さ+3補正、重量10%軽量補正、硬度=防御力にプラス補正】
【ウインドアースレザーコート:風属性と地属性が付与された革のロングコート。素早さ+3補正、重量10%軽量補正、硬度=防御力にプラス補正】
どうやら上手くいったみたいだ。
防寒具をユリナさんに返して着てもらったら、着心地や動きやすさが全然違うことに驚いていたよ。
これなら戦闘用ということでなくとも、普段使いの服でも耐久性が上がり身軽になるなら、これもまた需要がありそうだ。
と同時に腹がなった。作業に没頭しすぎてお腹が減っているのにも気が付かなかった。
なんかいい匂いがするなと思っていたらユリナさんが白身魚に似たマーマンの肉を使ってツミレ汁やソテーといった魚料理を作ってくれていた。
料理上手な奥さんをもらえて俺は幸せ者だよ。
「ユリナサン、アリガトウ」
俺はランカスタ語とジェスチャーでユリナさんに料理のお礼を言い、少し遅い夕食にすることにしたのだった。




