k-172
幌の中、俺は寒さで目が覚めた。
俺は寝息を立てるユリナさんの布団にもたれかかるようにして眠っていた。アッシュはユリナさんの手のところで気持ちよさそうに眠っている。
すっかり薪ストーブは燃え尽きていて、かなり寒い。
「火、火……」
俺はストーブの脇に積んであった薪をストーブにくべ、ファイアダガーで火をつけた。
徐々にあったかくなっていく室温。
パチパチと音を立てる薪ストーブに手をかざし、ようやく一息ついた。
どうやらユリナさんの看病をしていて、いつの間にか眠ってしまっていたようだ。
「そうだ、熱はどうかな」
ユリナさんのおでこを触ってみると、先ほどよりは大分マシになっている気がする。
「よし、いいぞ」
彼女の呼吸も一時よりは安定しており、快方に向かっているように見える。あとは幌の中をあったかくして湿度を保ち、食事と薬を飲み続ければ大丈夫だと思う。
「よかった……」
本当に変な病気だったらどうしようかと思ったんだ。
ノミにかじられただけで重症化するなんて話も聞くくらいだ。
こんなわけのわからない場所にはきっとわけのわからない病気もあるはずで、そんなもの俺がどうにかできる訳がない。
まだ油断はできないけど、快方に向かっているというだけで一安心だ。
俺はユリナさんのおでこのタオルを取り替え、自作した少し歪んだヤカンに水を入れてストーブの上においた。もちろん幌の中の湿度を上げるためだ。
それから何となく寝付けなかった俺は、薪ストーブのチロチロと揺れる火とヤカンから出る湯気を、ただひたすらぼーっと眺めていたのだった。




