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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-167

 俺たちは、川に沿って東へと幌馬車を進ませていた。


 逃避行とはいえ急ぐ理由もない。邪魔する者もいない。このまま国境まで進んで隣の国にでも逃げてもいいなと考えてもいる。


 とりあえず今はハインリッヒを警戒しつつ、定期的に移動を繰り返しながら、なるべく野宿をするという感じが良いのじゃないかと思っている。


 国境の検問で捕まる可能性もあるからな。



 川沿いを進んでいると、そこかしこに村とも呼べない家が数軒あるだけのような集落が点在していた。


 水場には人も動物も集まるものである。




 夜、野宿のため焚き火をしていると、あることを思いついた。


 幌馬車の中で焚き火をできるようにはできないだろうか? というものだ。


 幌馬車の中で焚き火をする唯一の問題点は煙の逃げ場所がないことである。ならば、テント用の煙突を真似て作ってしまえば良いのではないか?



 確かに十分に暖かいとは言えない幌馬車の中で、ユリナさんと肌を寄せ合い温め合うのはとても心地が良い。


 しかし生活環境が良いとも言えない。


 ユリナさんが風邪でもひいたら大変だ。当面医者にかかることもできないからな。



 というわけで、俺は幌馬車に簡易的な薪ストーブを取り付けることにした。イメージ的にはアウトドアキャンプで使うテントに取り付けるストーブだ。


 鉄で風呂を作った俺だ。その程度だったら余裕だろう。



 だが、いきなり「馬車にストーブを取り付けようプロジェクト」は頓挫の憂き目にあった。 


 ……炉がないのだ。


 石炭と劣鉄のインゴット、金槌などの鍛冶道具一式はもってきていたが、肝心のそれらを熱する炉がないことにはどうしようもない。



 うーん、どうしたものかと考えていると、それもすぐに解決した。



 次の日、川沿いを歩いていて見えた集落から見慣れた鍛冶作業独特の石炭の煙が見えたからだ。



 つまりその集落には鍛冶場があるということだ。



 あまり人目につくのは避けるべきだが、冬場で幌の中で暖を取れるストーブを手に入れることは、これから続く野宿のQOLを上げるのには必須だと判断した。



 ということで集落の人の影が見えた俺は、集落の人たちに向けて大きく手をふったのだった。

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