k-155
生ウニの衝撃が駆け抜けた宴会の後。
皆が酔いつぶれて倒れるように眠る中、俺は暖炉の前で文章を書いていた。
カリカリと紙にペンを走らせる音。
インクの何とも言えない匂いが俺は好きだ。
この不思議な世界に来た当初は、布団で眠れるようになっただけで幸せだった。
アッシュが俺といてくれるようになって、さらに幸せを感じた。
今ではありえないことに、俺に最愛の彼女ができた。
俺のとばっちりを受けて害が及んだ彼女を、俺は町から連れ去った。
その瞬間、俺は確かにヒーロー漫画の主人公みたいになった。
ヒーローになった俺には、守るものができた。
今度こそ正真正銘、本当に大切なものだ。
もう一匹狼など気取ってはいられない。
ヒーローはヒロインを守らなくてはいけないと相場は決まっているものだ。
敵はおそらく、あのハイリッヒとかいう貴族だろう。
この家は気に入っているが、彼女に害が及ぶ可能性があるとなると話は変わってくる。
金はたんまりある。
家畜の鶏をサラサに預け、馬車で長い長い新婚旅行とシャレこむのもありかもしれない。
俺はもう一人じゃない。
明日目が覚めたら三人に相談してみよう。




