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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-153

 夕刻。家に着いた俺の元に、アッシュがふっとんできた。


 アッシュは世界一可愛い。


 出迎えてくれたマルゴ、サラサ、ユリナさんの三人はジャイアントアーチン、もとい巨大ウニを運んできた俺に首を傾げている。


 この世界には、ウニを食べる風習はないのだろう。


 よくよく考えれば、こんなグロテスクな生物を誰が食べようと思うのか。


 最初にウニを食べた先人たちは、偉大だと思わずにはいられない。


 さて、今日はゆっくりウニ料理でも作りますか。


 俺は戦闘で疲れた体を癒すべく、ドラム缶風呂を沸かす傍ら、料理をすることにする。


 まずは、ウニ料理といえば生ウニだな。


 前に店でグラスの中に塩水と一緒に入れて出された生ウニは、見た目にもオシャレだったし絶品だった。


 その出し方をしよう。


 俺はグラスを用意し、塩水の中に生ウニを入れていく。


 氷を入れたほうが冷えて美味いだろうから、アイスの魔法で作った氷も一緒に入れる。


 それを、居間のテーブルの上に置く。


 スプーンで生ウニをすくって口にしたマルゴ、サラサ、ユリナさんが固まる。


 そして、すごい勢いで生ウニを食べ、俺にズズイと塩水だけになったグラスを無言で差し出す。


 サラサ、口に食べかすがついていて、せっかくの美人が台無しだぞ。


 俺は生ウニのおかわりを用意した後、暖炉の焚き火で生ウニのふわとろオムレツを作ることにする。


 ハーブ鶏の卵に生ウニ、チーズを混ぜ込み、フライパンでふわとろに仕上げる。


 塩で味付けをする他、隠し味にバルゴの果実酒を少々。最後に生ウニをのっけて完成だ。


 それをアッシュの分も含め、5皿。


 濃厚な香りが部屋中に漂い、アッシュの毛がよだれでベトベトになっている。


 あとで一緒にお風呂に入って、キレイキレイしような。


「アイス」


 カランと音を立て、グラスに氷を入れる。


 グラスにはユリナさんが蒸留酒をついでくれた。


 この蒸留酒は、ママがユリナさんと俺にと、マルゴたちにもたせてくれたものだ。


 それをチビチビやりながら、俺は生ウニのふわとろオムレツを作った。


 マルゴ、サラサ、ユリナさんの反応は、なんと全員が料理を食べながら号泣していた。


 こいつら酒でも回ったか?



 ◇◇◇



 料理作りもキリの良いところで、俺はドラム缶風呂に入ることにする。


 あれだけ喜んでくれるなら、料理の作り甲斐もあるというものだ。


 俺は蒸留酒ロックを片手に、タオルを頭の上に乗っけてドラム缶風呂につかる。ふー。


 アッシュはお風呂の中で楽しそうに犬かきをしている。


「最高だな」


 湯煙が漂う中、俺は思わずため息をつく。


 今日は雲ひとつない、冬の透き通った満天の星空だ。


 ふと、人影が近づくのが見えた。


 湯煙でよく見えない。マルゴあたりが、オムレツの催促にでも来たか?


「ケイゴ……」


「ガハッ! ゲホゲホ……」


 しかし人影が誰かがわかると、俺は驚きのあまり気管に蒸留酒が流れ込み、盛大にせき込んだ。


 ユリナさんが裸にタオルという格好でドラム缶風呂に入ってきたのだ。


 俺は恥ずかしさのあまり、くるりと後ろを向く。


 俺の反応を見て急に恥ずかしくなったのか、ユリナさんも俺に背を向ける。


 あ、ユリナさんの肩と俺の肩が触れた。


 絹のようななめらかな柔肌だった。


 ドラム缶風呂の中で、背中合わせのまま硬直し顔を真っ赤にする二人。


 誰の差し金だ、バカヤロー。


 本命サラサ、大穴マルゴ。


 まるで呆れたように、アッシュがピョンとドラム缶風呂から飛び出した。


 そしてぶるぶると体をふるわせて、水と毛をあたりにまき散らす。


 これ以上は、色々な意味で無理だ。



 「いくじなし!」となじってくれて結構。


 アッシュのおかげで絶好の機会を得た俺は、ユリナさんに「先に上がるね」とジェスチャーしてアッシュを抱っこし、その場から離脱することに成功したのだった。

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