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結婚式は、司会役を買って出てくれた、バイエルンさんの一言で厳かに始まった。
アッシュ、良い子にしているんだぞ。俺は、アッシュが大好きなサラサのいる壇上に突進していかないように抱っこした。
ヒラヒラの蒼いドレスにアッシュが飛びつこうとしているのは、誰の目から見ても明らかだった。
マルゴは純白の大きく美しい花束を手にサラサの前に跪き、目線を下げて捧げる。サラサはその花束を受け取る。
そして、結婚指輪をお互い交換した後、口付けを交わした。
バイエルン様が、「夫婦として認める」趣旨の発言をした後、全員で祝福の言葉とともに拍手喝采を浴びせた。
サラサは花束をエルザの方に向けそれをエルザがキャッチする。
隣にいたジュノがエルザを抱き寄せ、サラサに向かって親指を立てて「まかせろ」のサイン。
――この場にいる全員に笑顔が溢れた。
厳かな雰囲気から一転、晴れやかになった舞台の後、俺たちはパーティへと突入した。
俺は、トゥカリュスの刺身とハーブ鶏の刺身が大人気で、追加で作るのにてんやわんやだった。
もちろん俺も高級酒をチビチビやりながら、彼らの催し物を見ながら料理を作った。兵士の皆さんたちも即興でヘンテコな歌や踊りを披露していて、全員で爆笑した。
俺も考えていた催し物を披露した。
商社マンの頃、接待でこの手のことは沢山こなしてきたのでお手の物だ。
そういえば、接待飲みの際、罰ゲームでストッキングを頭から被って笑いをとるという意味不明な伝統のある船会社があったなと思い出す。
商船的なM的な。
俺は、結婚式といえばあの曲しかないだろうと有名なウエディングソングを歌った。コマーシャルで使われていたお馴染みのあの曲である。
歌っていると、サラサの目じりに涙が光った。言葉が通じていないのに不思議なものだなと思った。
マルゴ、サラサ。本当におめでとう。
彼らと彼らを祝福する人々。その多幸感溢れる熱気は、俺の家の敷地一帯の空間を幸福という色一色に染めあげたのだった。




