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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-109

 昼下がり。ブルーシートの上で腹が鳴って目が覚めた。ずいぶんと惰眠を貪ってしまった。


 アッシュも気持ちのよい日差しのおかげか、俺の横でまるまってスピースピーと寝息を立てている。


 俺はふあとあくびをして、ストレッチをした。


 いかんな。石壁に囲まれて安心してしまってはますます怠惰になってしまう。



 眠い目をこすりつつ、昨日作ったスモークチーズや燻製卵を火で温めて、パンと一緒に食べることにした。


 寝起きのため、しばらく切り株椅子に腰掛けてテーブルに頬杖をつきながらボーッとする。



 小鳥が石壁の上にとまって、さえずっている。


 この世界独特の音だ。少なくとも北海道の農村では聴いたことがない。


 アッシュが石壁内に植えているイレーヌ薬草の花にとまった虹色のチョウチョをピョンピョンと追いかけているのをボーッと眺める。


 平和だなあ……。


 なんでだろう、単に家が石壁に囲まれただけなのになぜかもの凄く安心する。


 そこでふと思い至る。俺ってモンスターが襲ってくるような場所で生活していたんだよな。


 確かにアンクルスネアや鳴子などの罠は家のまわりに仕掛けてあるが、今までは俺の家は敵から丸見えだった。


 しかし、石塀に囲まれたことによって、俺の存在が外から見えなくなった。


 鳴子など、糸を張った警報装置に過ぎないが、石壁は物理的に敵の侵入を遮断する。


 安心感が凄いのはそのおかげか。安心感が増したことにより、元々少ししかなかった10%程度のやる気が、3%くらいに下がった気がする。


 まあ、それはそれで良いか。


 俺は遅い昼飯を食ってまた眠気が襲ってきたので、再度ブルーシートの上に寝転がる。


 アッシュが呆れたようにフンと鼻を鳴らしたのだった。




 この日は、日が落ちるまで日向ぼっこをした。


 夜は蒼い満月を眺めながら、チビチビやりつつ燻製を作る。


 そして、時間に縛られず、好きな時間に眠りに落ちる。


 俺は憧れていた生活がいつの間にか実現していたことに気がついたのだった。

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