モノローグ・サラサ2
マルゴが体を小さくして、そそくさと店を逃げていく姿を目撃した。
何から逃げているのかしら?
このハゲー!!! 違うだろ!!!
はっ! 私としたことが取り乱してしまったわ。
でもこれは確定。浮気だわ。
マルゴはシラフの時は頑固一徹で死んだ奥さんを大切に想い再婚はしない一途な男だけど、酒を飲んでハメを外しすぎる癖がある。
マルゴは「仕事の付き合いで」とか、「大人の飲みだ、本気じゃない」とか言い訳するけど、そんなことは惚れた女の私からすれば関係ない。
そんなん、立派な浮気でしょ?
私の瞳にメラメラと怒りの炎が灯る。
マルゴが他の女とイチャイチャしている姿を想像し、私の怒りは一気に頂点に達した。
不思議なもので怒りの度がすぎると妙に気持ちが落ち着くわね?
怒りの表情から一転、私から表情という表情が完全に抜け落ちた。
「あの男……、私の気持ちを知っておきながら……。どうしてくれようかしら?」
私は冷徹なアサシンとなってマルゴを追跡することにした。
鷹の目のように鋭い目つきでマルゴを観察する私。一挙手一投足見逃すつもりはないわ。
とりあえず女と一緒にいる現場を押さえて問い詰めてやる。
でも予想は外れた。歓楽街の方向に行くと思ったら、町の外に行くみたい。
「なーんだ。ケイゴのところかあ……」
案外拍子抜けだったな。私の瞳から怒りの炎が消えていった。
んん? でもなんで体を小さくしてコソコソして逃げるように出ていったのかしら……? 逃げるとしたら私からしかなくない?
「……」
間違いないわ。やっぱり私から逃げていたんじゃない!
私の瞳に再び怒りの炎が灯った。ちなみに怒りの炎はさっきよりも大きい。
「……どんな罰にしようかしら?」
なんだか怒りのあまり笑えてきた。
「うふっ……、うふふふふ……」
「ヒッ!」
「お母さん〜」
大通りで仁王立ちしながら笑顔を浮かべる私を見た子供たちが、引きつった悲鳴をあげて泣きながら逃げていったけど、今はそれどころじゃないわ!
「うーんまずはそうね……。とりあえず店の中をキレイに掃除をして、美味しい料理を並べようかしら」
どうすればマルゴが恐怖するかを考えると、少しは気分が和らぐわ。ふふ、ちょっと楽しくなってきちゃった。
「それから店の中をユリファの花で埋め尽くして待っていることにしましょう……」
そして、冷たい笑顔、声で「どこに行っていたの?」と聞いてみるのもアリね?
「うふふふ……」
マルゴ、私から逃げるなんて酷いじゃないの?
乙女心を傷つけた男には相応の報いを受けてもらうわ……。




