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【書籍化・コミカライズ化】商社マンの異世界サバイバル ~絶対人とはつるまねえ~  作者: 餡乃雲(あんのうん)


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k-100

 朝起きると、寒気がした。


 あ、これは駄目なヤツだ。熱があるときのあのダルさ。喉も痛く咳が出る。鼻もズビズビする。俺はフラフラしながらも、何とか家畜とアッシュにエサをやる。


 食欲はないが、無理やりにでも果物とパンを口にする。


 その後、薬……といってもイレーヌ薬草とムレーヌ解毒草を乾燥させて粉にしたものだが、それを水で流し込んで、再び横になる。


 いよいよヤバイかもしれない。


 現代日本が、どれだけ恵まれているかわかる。


 このまま死んだらどうしようかと不安になった。


 この世界には病院がない。


 レスタの町にはあるのかもしれない。しかし、俺にはわからない。医療水準も不安だ。きちんと調べておくべきだった。


 どちらにせよ、荷馬車にガタゴト揺られて町へ行く元気はない。医者を探す前に確実に病状は悪化するだろう。


 俺はこのまま死ぬかもしれない。


 何せ、この世界には現代日本レベルの病院もなければ風邪薬もないのだから。


 薬草が効く保証もない。俺は恐ろしさで身震いした。


 暗い顔で横になっていると、アッシュが俺の頭のところに来た。


 俺の目の前にアッシュのお皿に入れたはずの、よだれでベトベトになった干し肉が置かれた。


 俺にくれるのか?


 アッシュはよだれで毛がベトベトになっているのに、きちんとお座りして俺が食べるのを待っている。自分も食べたいのに俺にくれるようだ。


 俺は思わずアッシュを抱きしめていた。


「アッシュ一緒に食べよう」


 俺は干し肉を半分に割ってアッシュと食べた。弱気になっていた心がずいぶんと温まった。


 そして、俺は再び横になり目を閉じた。


 俺は、眠っては何かを食べて薬を飲んで、また横になってを繰り返した。


 一人では不安に押しつぶされていただろう。


 しかし、アッシュのおかげで、不思議と不安は無かった。夜の暗闇の中、ランタンの灯りは消さずにおいた。



 俺の足元が、いつもよりやけに温かく感じられた。

 

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