第六話
闘技場までの間、経験値を稼ぎ続けた。その間勉強もしたが。興味をそそられたのは独立迷宮国家イシュタルテと独立学術国家メイリアだ。
前者はその名の通り、迷宮が存在していて、以前語ったかもしれないが、数カ所入り口があり、それが奥地の方ではつながっていて、一つの迷宮であると言われている。ここは宝の山であり、魔石が産出する唯一の場所らしい。魔石とは魔道具を作るのに必要な材料だ。俺はショップで買えるが。
で、後者の国家の話ともつながってくるのだが、魔石はほぼ全て一度学術国家へ輸出される。そして、それを多種多様の魔道具にする。それを世界中に売りさばく。
というわけで、前者と後者の国家は密接な関係にあり、どちらもこの世界には無くてはならない存在である。
因みに、前者は冒険者の聖地。後者は学者たちの聖地となっている。
閑話休題
と、勉強した成果はともかくとして、少しだがレベルも上がり、ついに闘技場での戦いが始まろうとしていた。
「き、貴様!なぜここに居る!」
と、獣人族の族長。
「俺も参加するからだよ。名前も名乗れないお馬鹿さん」
というと顔を青くしたり赤くしたり百面相で面白い事になっている。
「俺の名前は……その……いや、どうでもいいだろ!それより名前も名乗れない馬鹿だと!ふざけやがって!俺の名前は……俺の名前は……ええい!俺も男だ!言ってやろうじゃないか」
溜めに溜めまくる。
「良いか、一度しか言わない。よく聞いておけ。俺の名前は……ポムタンだ」
「「「「「「ブフッ」」」」」」
思わず全員で吹き出してしまった。
「貴様!貴様だろ名前を聞いてきたのは!だから言いたくなかったんだ!」
「いやいや、ポムタン、良い名前じゃないか。なぁ、みんな」
「そうね。いい名前ねポムタン」
「うむ。良き名だ。ポムタン」
「素晴らしい名前だと思いますわ。ポムタン」
「俺は可愛いと思うぞ。ポムタン」
「ポムタン(笑)」
全員が馬鹿にしている。
「き、貴様ら!特に最後何だ!隠しもせずに笑いやがって!ふざけるのもいい加減にしろ!……そういえば貴様、出場すると言ったな!今度こそ貴様をギッタギタにしてやんよ!」
「はいはい。期待しないで待ってるね……ポムタン(笑)」
「貴様!笑うな!」
と、叫んでいる最中にアナウンスが流れた。
『これより族長を決める戦いをこれから行う。ルールは簡単。最後まで中央に残っていたものが長だ!参加者は全員中央に集まれ!』
と聞こえたので、俺はその場から転移して中央に一瞬で現れる。一瞬のうちに静寂が支配した。
「あれ?みんな来ないの?俺だけ?俺の勝ち?」
と言うと、猛り狂った獣共が集まる。そして、開始の合図も無いまま戦闘が始まった。
俺は最初の一人を手加減スキルを使い、ふわっと体を持ち上げ、群がってくる獣に向けて放り込む。周囲を巻き込みながらどこまでも飛んでゆく最初の一匹。最終的には数十人が一気に壁まで吹っ飛んだ。
再度静寂が場を満たす。
「次は誰?」
と言うと、悲しいかな俺は居ないもの扱いされた。そして、最後に残ったのがやはり強いのだろう。ポムタンだった。先程から戦いを見ていたが、他より頭一つ抜きん出てる。
「貴様をぶっ殺す事が出来て嬉しいぜ」
「そういう言葉は俺を殺してから言いなさい。滑稽ですよ?……ポムタン(笑)」
「き、貴様!もう許さん!絶対に殺す!」
そう言うと突っ込んできたので、彼の運動エネルギーをフルに使ってくるりと躱して、回転する。ジャイアントスイングの要領だ。徐々に回転が早くなっていく。俺からすればステータス差がありすぎるため遅く感じるが。ともかく、彼の出している力のみを増幅させ、そのまま壁までふっとばした。もちろん手加減スキルを使ってるが。
ビタン!と大きな音が響いた。壁にぶつかった音だ。というか、地響きまでしたが、死んでないだろうか?
一人がポムタンのところまで走っていく。判定はもちろんポムタンの負け。すでに意識はなかったそうな。
こうして俺は労せず勝つことが出来た。
「あっ、言っておくけど、最後まで残ったからと言ってここの族長になるのは放棄するから、やっぱりポムたんが族長を続けてね。俺は力量をわからせたかったから参加しただけなので」
というと、やはり周囲は静寂に満たされる。
「わ、わかりました。優勝者はヴィルヘルム・シュッツ!だが、族長には続けてポムタン様がなることになりました!」
とレフェリーが発言すると、会場が一気に沸いた。
まぁ、こんなところだろう。とりあえず、しつけが必要なら何度でもして早くここから出ていこう。と決心する俺だった。
後日、懸念していたことが現実に起こった。
「貴様!俺ともう一度勝負しろ!今度はイカサマはなしだ!」
「あのさ、いい加減認めろ」
「くっ、あのときのイカサマの方法はわからないが、俺ともう一度戦え!」
「はぁ~、気絶させるのがあかんのかな?とりあえず、良いよ。しつけてやる」
そう言って再度闘技場へ来る。そして俺はイチイバルの弓を取り出した。
そして、試合開始の合図が鳴らされた。
突っ込んでくるポムタンを避けるとポムタンの後方へ転移した。そして、魔力を適当に込める。そして、絶対にポムタンに当たらないように矢を射る。どれほど分裂したかわからない矢が物凄い密度で闘技場に突き刺さる。ポムたんの周囲を除いて。
「ヒィッ!」
やっとポムタンも理解してくれたようだ。
「き、貴様!魔術師か!魔術は我々獣人の大会では使用禁止だ!もちろん武器も使用不可だ!」
「そうだったの?構わないよ。因みに今のは武器だから」
と言ったところで矢が全て一斉に消える。
やはり客席は静寂に包まれている。
「じゃあ、武器なし、魔術なし、ついでに魔法もなしでやってやろう」
そして、再度鳴らされる合図。
ポムタンはやはり奇声を上げて突っ込んでくる。そして、貫手で攻撃してくる。俺はそれを横からつかむ。もちろん手加減スキルを使用して。
「な、なんだと!貴様、離せ!」
「まぁ、無理だと思うが剥がしてみろ。それが出来たらお前の勝ちでいいよ」
「言ったな!レフェリー聞いていたな!俺の勝利条件が変更になったぞ!」
「ちゃんと聞いてた!こいつ馬鹿だ!」
観客は大笑いしている。
「じゃあ、この手を引っ剥がしてやる」
先程殺すとかなんとか言ってたのが引っ剥がそうと必死になる。が、剥がれない。挙げ句、俺の喉に反対側の手で貫手を食らわせてきた。それも喉に。だけど、刺さらない。だがやつはめげなかった。次に眼を狙ってきた。そして、貫手が眼球に当たる。が貫通しない。
「で、いつになったら引っ剥がしてくれるんだ?」
その後ポムタンは蹴ったぐったり、挙げ句金的まで行ってきたが、俺には一切ダメージは無い。因みに感染していた男どもは真っ青になりながら股間に手を当てている。
「そろそろ実力差を理解したか?」
「くっ、まだだ」
と言って再度剥がそうとする。
「もう面倒だ」
俺はそう言うと、手加減しながら攻撃しようとしてくる手や足、頭を攻撃するタイミングで小突いていく。
「ぐぁ、ちょ、ま、や、やめ、やめろって言ってんだろ!」
「なんでだ?戦いの最中だぞ?呑気なものだな」
ここまでしても実力差を理解しない。どうしようか。
「ふざけるな!やはり貴様はぶっ殺す!だからこの手を離せ!」
面倒になってきたので、そろそろ終わりにさせようと思う。
「手は離さない。が、そろそろ終わらせてもらう」
そう言うと持っていた手を背負投の要領で投げ飛ばす。手を持ったまま。だって、手を話したら敗北宣言されそうだし。そして、自重で落下する。そうすれば、俺の攻撃に鳴らないから、手加減の必要はなくなる。手はちゃんと持っておかないと行けないから手加減スキルは現在パッシブだが。
「ぐはっ、き、貴様!良くもやりやがったな!」
ふむ。堪えていないみたいだ。じゃあ連続でビッタンビッタン叩きつけますか。
俺は、再度手を握り、無理やり立たせ、再度投げ、落下させる。
「ぐはっ、おい、くぴゃ、ちょ、ぐっ、あひゃ、ぴっ」
連続で何かを言おうとしても立たせては投げる。立たせては投げるを繰り返す。今回は自重で落下しているため意識は失ってない。
「おい、しつけはまだ必要か?」
「も、もう、や、止めてくれ……」
「お前の負けで良いのか?俺を認めるか?」
「わかった、認める。だから手を話してくれ」
「お前が負けを宣言するほうが先だ。これで俺の負けにされたらたまったもんではない」
「チッ、喰らえ」
というやり取りを何十回繰り返しただろうか。
「お、俺の負けだ」
こうして、しつけは完了したのであった。ああ、人の心を折る作業はめんどくさい。
その後、獣人族をまとめることを約束し、エルフの下につくことも約束させた。海人族は手も足も出ない状況になったためか、結構すんなりとしたものだった。というか、海人族は全員あの顔なのか……正直怖い。
閑話休題。
この後はエルフの街に戻り、ちゃんとうまく国として回せるようにしてやる手伝いをしなければならない。これが終わるのは一体いつになることやら。
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