341エピローグ
(エピローグ)
夏の終わりのせみしぐれ。俺は純架ともども何とか宿題を終えて、渋山台高校2年1組の教室に登校した。まだ時刻は午前7時。にもかかわらず、奈緒や日向、英二に結城、真菜に誠、朱里に健太の『探偵部』の面々が一堂に会していた。
奈緒がこちらを睨んでぶうたれる。
「遅いよ、桐木君も楼路君も! 部室がないからってこの教室を集合場所にしたのは桐木く……って、あれ?」
彼女はまぶたを幾度か開閉した。しげしげと俺や純架の様子を見やる。
「何だかたくましくなってない? 2人とも……」
俺は自分の胸を拳で叩いた。
「ちょっと修行したからな。なあ純架?」
「まあね」
英二が足を組んで机に頬杖をついている。
「何だお前ら。俺に海で負けた腹いせに、どこぞの格闘技ジムにでも通ったのか?」
誠があっさり看破した。
「いや英二、こいつらに月謝を払う金なんかないよ。ただ単にガテン系のバイトをしてただけと俺は見るね」
結城が二人に水筒の飲み物――恐らくアイスコーヒーを注いだ紙コップを手渡す。
「何だかみんな、夏休み前より一回り大きくなった気がしますね」
英二が飲料を喉に流し込んだ。冗談半分に専属メイドをなじる。
「何だ結城、それは俺へのあてつけか?」
「まさか」
結城は苦笑した。彼女もいい顔をするようになった。テニス部の菊池との進展やいかに……
真菜が朱里と指相撲している。しかし朱里の目線は対戦相手ではなく俺の上にあった。真菜がお留守になっている後輩の注意を喚起する。
「朱里さん、何をボーっとしてるのですですか?」
俺の義妹は今しがた自分の行為に気付いたらしく、顔を赤くして慌てて真菜に正対した。
「いや、何でもないですよ、台先輩。あはは……」
何だろ? 俺の頭に寝癖でもついてたのか?
突然フラッシュが焚かれた。見れば日向が黒板を背にこちらを撮影している。
「皆さんのオフショット、新学期が始まる記念にいただきました!」
健太が朝の弁当を使いながら、日向に注文をつける。
「どうせなら『探偵部』全員――辰野先輩も含めた全員で撮りましょうよ」
純架が賛成して、鞄から自撮り棒とスマートフォンを取り出した。みんなを手招きする。
「そうさ、柳君いいこと言った。日向さんも収まらなくちゃね。……天に反旗を翻し部員たちよ、我が元に集結するのじゃーっ!」
どこぞのいんちき教祖か。
純架のスマホの画面に『探偵部』の顔が揃う。みんな笑みを含んで、白い歯を見せている者もいた。
「はい、チーズ!」
純架がスイッチを押すと、画面が一瞬固まって、その後また動き出した。撮れたみたいだ。
「今のは『探偵部』のグループLINEに載せとくよ。後でめいめい保存するように。さて、それじゃ夏休みの土産話、とくと聞かせてもらうよ……」
去年に引き続き、今年も事件だらけだった夏。俺たちは会話の達人・誠の喋りに爆笑しつつ、思い思いに、新たな学生生活をスタートさせるのだった。
まだまだ続きます! ……と言いたいところですが……
ストックが尽きてしまいました。
また書き溜め期間に入るので、どうぞそのままお待ちください。(´∀`=)




