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248新入生勧誘事件07

 健太は封筒を拾って埃を払い落とし、純架に返した。


「ありがとう。英二君、これ返すよ」


 英二は受け取って金額を確かめると結城に渡した。


「ちょうどだ。それにしてもどうする? この柳への制裁は」


 健太は日向からもらったポケットティッシュで顔を拭っている。純架はにこやかに首を振った。


「制裁なんてとんでもない。柳君、僕からのお願いは二つだ。まず一つ目は、もう二度と暴走族『銀影』や古志君、皆川君らに関わらないこと」


 健太の肩を叩く。


「二つ目は、君の安全を考え、また我々の野望のため、僕ら『探偵同好会』に入会すること。いいね?」


 健太は真っ赤に泣き腫らした目で快諾した。


「はい。おいらで良ければ、喜んで……!」


 こうして『探偵同好会』は、9人目のメンバーを新たに迎え入れることになった。純架が胸に手を当てる。


「以上がこの事件の全貌だよ、皆」




 その後まだ時間があるということで、俺たちは旧棟1年5組の『探偵同好会』部室に集結した。純架は黒板にチョークを走らせながら、新入会員の健太に探偵の心得を説き始める。それを教室後方から眺めながら、俺は英二に問いかけた。


「なあ英二、純架は今回の一件の真相を何となく見抜いていたと言っていたけれど……。実際どこまで状況を読んでいたんだ?」


 英二は微笑をたたえる。


「純架は今回策士だったな。あいつは柳健太の喧嘩強さだけではない、その悪に染まりきれない心を正確に読み取った。だから柳に自分の、『探偵同好会』の『優しさ』を見せ付けることで、土壇場での逆転を誘ったんだ。俺たち全員で校舎裏に向かったのは、古志や皆川に数を見せつけ、その喧嘩っ早さが抑制されることを期待しただけじゃない。柳を圧迫する意味もあったんだ」


 結城が差し出した茶菓子を頬張り、コーヒーを飲んで喉の底に落下させた。


「そして読み通り、柳は2人を裏切ってこちらについた。純架は揺れるあいつを手玉に取ったというわけだ」


 俺は腕を組んでうなる。


「何だ、それじゃ今回の純架の優しさは計算づくだったってわけか。そんな性格じゃないように思えるけど」


「さあな。あるいは最初から天然だったのかも知れん。俺もあいつは未だに良く分からん。ただ、今回は労少なくして功多し、だった。ちょっと動いただけで新人を1人確保したわけだからな。結果だけ見れば万々歳というところだろう」


 純架は相変わらず健太に指導している。


 俺は彼の底知れなさに、改めて感嘆するのだった。

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