第7話 二撃目
「これを避けるか」
よし……! やっぱり、俺は時間を回帰している……!
さっきと完璧に同じ軌道だった。
これが【回帰】の能力……死がトリガーとなった、やり直し能力――。
俺は乾いた笑いが出る。あまりに荒唐無稽。さっきのあの経験が、死が、過去のものであると同時に現在の物でもある。夢のようであり、ただの妄想のようであり、そして過去の記憶のようでもある。
とうてい俺のようなド素人がこんな化け物の攻撃を回避することは本来不可能だが、あらかじめ分かっているなら話は別だ。
これなら、もしかしたら――なんとか生き残れるかもしれない。
わずかに希望が芽生える。
すべての攻撃がわかり、全てを凌げるのなら。
“失敗しない”未来に辿り着けるかもしれない。
この、死ぬたびに表示される数字はおそらく俺の生得魔法【回帰】の回数制限……この世界で与えられた、俺の命の総数ってところか。
だとすれば、俺はまだ約90回ものやり直しができるってことだ。チートだろこれ……!
「回避したぜ……! お前の――」
瞬間、俺の左わき腹が激しい痛みを訴える。
「は……?」
染み出した俺の赤い燃料が、制服越しに止め処なくあふれ出す。
遅れて、脇腹が熱くなってくる。
いったい、いつ――。
剣聖の刃が俺の脇腹に食い込んでいる。
そして、そのまま俺の身体を横断するように剣が振りぬかれる。
な――/にが――
視界が急激に高度を下げ、俺の視線が腰辺りに来たところで。俺はようやく自分の身体の状態に気が付く。
上半身と下半身の接続は断たれ、まるで別々の生き物のようにそれぞれ別の方へと倒れこんだ。
激しい痛みと不快感、吐き気に寒気。
ありとあらゆる身体からのサインに対し、発狂しそうなほどの声が出そうになるが、もはや俺の身体は声を出す力さえ残っていなかった。
「――――」
「おや、二撃目は回避不可か。……とはいえ、最初の回避は驚かされたよ」
剣聖は振りぬいた剣を構え、こちらを見下しながらつぶやく。
馬鹿か……俺は……。そりゃそうだ……最初の一撃を回避できたからって……追撃が来ないわけがねえ……。
「僕は剣聖――アルトレス・バルフレア。僕の攻撃を一度は避けたんだ、誇って死ぬと良い。」
言ってろ……殺人鬼……。
もう……二撃目も読めたぞ……。次は――
しかし、嫌な予感が過る。仮にあのカウントダウンがリトライの上限なのであれば……そしてこの先も、一つの死因を超えた先にまた次の死があるだけなら……俺はただ死ぬまで殺され続けるだけ――……。本来は一回でいいのに、100回も……。
命は急速に終息していく。瞼が落ち、思考が停止していく。
そうして、俺の意識はまた途絶えた――。




