22、大高城攻略
大晦日。千代丸は父・信秀の所に呼ばれていた。
「大高城が開城した。千代丸よ、そなたを城主に任じようと思う」
千代丸は嬉しそうな顔をしない。ある程度、予想はついていた。大高城攻めでも梶原平九郎の武功は名高い。信秀も千代丸のことは大きく買っている。三歳で城主は早いが、優秀な人材は抜擢してきた信秀のことだ。城主拝命は有り得ることだ。
大高城は対松平の最前線でもある。千代丸の肩には重責がかかる。
ただ、千代丸は落ち着いていた。松平一族の松平信定は信秀に誼を通じてきた。
清康は信望を失っている。代わりに千代丸の力が増していた。水野家臣だった梶原平九郎も従えている。滝川八郎と言う軍師も加わった。
信秀の話を聞きながら、千代丸はどこか上の空で別のことを考えていた。
享禄五年正月、千代丸は大高城に入城し、家臣団と共に評定を行った……というのも建て前で年賀の祝いをしたのである。
梶原平九郎とその妻、滝川八郎とその妻といったように家族も参加する懇親会となった。
「若、新年明けましておめでとうございまする」
岡田助右衛門が平伏する。千代丸は笑みを浮かべる。相変わらず、幼児らしからぬ笑みだ。
「大高城攻め、大儀であった。花井一族も新しい家臣である。皆、別儀なく付き合うように」
家臣団が返事をする。千代丸の家臣は増えていく。次なる地は松平の支配する三河国だ。そのためには大高城を改修工事して内政に力を入れる必要がある。
(ひとまず危機は去った。家臣団を編成し、徴兵を行う。寺社には禁制を発しよう)
千代丸は休むことなく、次なる手を打とうとしていた。松平清康を封じ込める。それが生き残る最善の道だと千代丸は理解していた。




