いうことを聞かない心
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本日二話目スタート♪
(`・ω・´)ゞ
「さぞフレイヤ女王陛下様は、お綺麗で、いい女なんだな?」
「あ?」
後ろから来る刺々しい声にカインは、腰かけていたカウンターテーブルに仰向けになり、声の主であるマリアを見る。
逆さまに見えたものはハイエルフの美女が、碧い瞳を鋭く細めた目をジトっとさせて不機嫌にカインを睨んでいる顔だった。
「何だ? 寝起きは機嫌が悪い方なのか?」
「……別に」
エルフの特徴である長く尖った耳を普段より上に上げ≪不機嫌です≫と顔に書いてある様な表情で答えてくるマリアに、ノースオブエデンの住人達とは逆さまな顔をカインは傾げる。
「じゃあ、何なんだよ? あの女聖騎士様がそんなに嫌いか?」
「テメェほど嫌いじゃねぇよ! 別にアタシの機嫌は悪くねぇ!」
カインの的外れな言葉にさえ何故かいちいち苛々してしまうマリア。
「どう見たって悪いだろ? あー、海賊だからフレイヤに何か怨みでもあんのか?」
カインの唇がフレイヤの名前を紡いだ瞬間、マリアは自覚していない心の中に渦巻く苛立ちの原因と、黒い感情が抑えられずに先程よりも耳と目をつり上げて大きな声を出す。
「悪くねぇし! 女王陛下様のことなんざ、いっかいの海賊のアタシに関係あるわきゃねぇだろ!」
「ほう? じゃあ何でさっきフレイヤの名前を出したんだよ?」
マリアの態度に、今迄で最大級の悪戯っ子な悪ガキの笑みでカインは訊く。
「ウルセェよ!!」
「アレか? 俺が他の女を褒めたから嫉妬してんのか?」
実に楽し気にマリアをからかっているカインに、キースは困った顔をしていると、マリアは素早く下腹と短パンに挟んでいる銃を抜き、銃口をカインに向け撃鉄を起こす。
「しつけぇぞ! 何でアタシが妬かなきゃなんねぇんだよ!」
百年以上生きてきたマリアだが、今自分に渦巻いている感情は、一度も経験したことがなかったのだ。
さっきドアの前で盗み聞きをしていた時、キャサリンのことをカインが話し出した時もカインがキャサリンに色目を使い、口説こうとした時も、例えそれが冗談だとわかっていてもマリアは怒りに支配されそうになった。
何故こんなにもカインから他の女の名前が出るだけで、褒めるだけで、苛立ちが止まらないのか理解できず、癇癪を起し、パニックに陥ってしまう。
「はん! アンタがどこの誰をヤラシイ目で見て褒めようが、アタシには関係ねぇ!」
言葉が止まらない。
こんな些細なことで自身の心の制御が利かなくなってしまい、自分の言うことを聞かなくなってしまった身体は暴走を始めた。
心の底から突き上がってくる黒い衝動は、罵声の次にマリアの指に銃の引き金を引かせる。
何故自分がこんなにも不愉快になったり、カインに対して怒ってしまうのかマリアは自分がわからなくて怖くなった。
そして衝動的に引き金を引かれたフリントロック式銃は、撃鉄が下り撃鉄の先端に付いた燧石がフリズンの当たり金を擦り、火花が散った。
銃が流れる様に弾丸を発射しようとしている中、カインはやりすぎたと焦る。
火花が散ったと同時にその衝撃で開いたフリズンがバネにより瞬時に閉じられ、火皿内に火花が閉じ込められる。
銃は引き金を引いた瞬間には弾丸を発射せず、発射するまでには時間差がある。
刹那の中、カインは銃の知識を考えながら、弾丸を避ける為に銃口が何処を向いているかよく見極める。
火花は点火薬に伝火され、銃身に開けられた火門を通り、銃身内の装薬が爆発すると、煙を上げ、銃口から弾丸がカウンターテーブルの内側にあったカインの顔の横に着弾した。
閃光と共に爆発音がノースオブエデン内に響いた後に訪れる静寂。
マリアはその中をカウンターテーブルに片手をつけ、テーブルの上を、両膝を軽く曲げさせた足を横向きにさせて通り抜ける。
「あっぶね! っておい! マリア待て!」
何とか顔に弾丸が当たるのを避けたカインが腹筋を使い瞬時に身体を起こし、ドアを開けて店から出ていくマリアに声を上げる。
だがマリアはカインの呼びかけには応じず、走り去っていってしまった。
「やっと再会。を、果たした、愛しき人。だと言っても、はしゃぎすぎ? です。ご主人様」
店内の騒ぎを聞きつけたのか、居住スペースと酒場を繋ぐドアを開けた、黒いドレス姿のシャロンがたどたどしくカインを責める。
「まぁ、向うは綺麗さっぱり忘れちまってるみたいだがな……」
カウンターテーブルに座りながら、カインはどこか寂し気な目でマリアが出て行ったドアを見つめる。
「フフフフフ、ご主人様。も、マリア様、が相手。だと、好きな子をイジメる悪ガキ。そうなるの? ですね?」
「――うるせぇよ。別に好きな訳じゃないさ……ただ気に入ってるってだけだ」
カインの悪足掻きな言葉に、軽く握った片手を口元に当て、不器用に笑うシャロン。
「そうですか。でも、ここで女性、追いかけないの。三流以下の男に、なってしまうです」
目は長細い紫色の布で隠されているものの、少しだけ他人が見てもわかる様な笑みを浮かべてシャロンに促さる。
するとカインは座っていたカウンターテーブルにグラスを置き、テーブルから降りると、溜息を一つ零す。
「はぁ……わかってるさ」
後頭部を片手で掻きながら答えたカインは、店の出入り口のドアに向かって歩き出す。
「それでは、私も、マリア様。お探しする。ご主人様、どっちが、早く捕まえられるか、競争? しましょう。まだ、ツェペシュ公が、使いを送ってくる。かも? です。そいつ等、現れないうちに」
カインに続きシャロンも店から出ようと歩きはじめる。
シャロンは目が見えないが、反響する音や風の音等を聴き、更に目以外の様々なものを使いながら、王国を問題無く歩くことが可能だ。
だからシャロンの言葉に誰も驚いたりはしなかった。
「いってらっしゃいませ、カイン様。シャロン様。お二人が留守の間のお仕事は、お任せくださいませ」
ノースオブエデンから出ていく二人の背に、キースは綺麗なお辞儀をして見送る。
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