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第七話 絶対に嫌です!!

 「二階堂くん、ジュース買いにいこ」


 「いやです」


 食い気味に断った。


 絶対に奢らされるやつだよねと思い、僕は立花さんを睨む。え?意味がわからない、何故か立花さんは素っ頓狂な顔で首を傾げている。


 あーあれか?私が誘ったのにコイツなに断ってんだ的なやつか?


 僕は睨むのをやめて、これ以上関わると何されるかわからないと思って、携帯を操作する事にした。


 「にかいどうく〜ん」


 「いやです」


 「ブハッ、まだ何も言ってないし、警戒し過ぎ」


 立花さんはそう言って笑いながら此方を見ている。


 その笑顔が、徐々に真剣で何かを訴えてくるような表情に変わっていった瞬間、咄嗟に目を逸らした。


 良からぬことを考えてる事が容易に分かったからだ。


 僕は眉間に皺を寄せそれを摘み、次の災難に備えるための思考を巡らせた。


 だがそんな僕の予想斜め上から攻めてくるのが立花蒼だ。


 「二階堂くん、髪切ろっか?」


 「え?はぁ?何言ってるんですか?」


 僕は怪訝そうな顔をして、立花さんの方を見る。


 「髪切ろっか」


 「なんでいきなり髪切る話になるんですか?」


 なんかもう話しに付き合うのも馬鹿馬鹿しく思う。


 髪切ろっかとは誰が切るの?そもそもなんで切らなくちゃいけないのか?その理由すらわからない。


 「だってさ、それ前見えて無いよね?前髪で眼鏡隠れてるよ?」


 「まぁ確かに見えにくいです。だからと言って、なんで立花さんの判断で、髪を切る必要があるんですか?僕はある程度伸びたら自分で切ってるので構わないで下さい」


 ここまで言えば引いてくれるだろうと、僕は机の下で拳を握り小さくガッツポーズをした。


 「自分で切ってたの?私付き合うからさ、一緒に美容室いこ」


 「僕の話し聞いてました?自分で切るから大丈夫です。美容室なんて行ったことありませんしそんな事にお金かけるならWEBコミック買いたいです」


 誰が好き好んで髪を切るのにお金をかけないといけないんだ?そんなことは、世のお洒落好きがやればいいと思う。


 それに、お金を使うなら自分の好きな事に使いたい。


 僕はそう思ってまた携帯を操作しようとしたその時、立花さんが机に頬杖をついて足を組み明らかに不機嫌そうな態度で僕に語りかけてきた。


 「二階堂くんさぁ、拒否権なんてあると思ってるの?私が行こうって言ってるんだから行くよね?」


 「なんで拒否権が無いんですか?僕にだって人権を主張する権利はあります」


 「なに言ってるのかわかんない、私が誘ってるんだから四の五の言わずに行くよ」


 「横暴です」


 僕は深い溜息をついて項垂れた。


 たぶんこのやりとりは僕が承諾するまで続くのだろう。


 だからこそ僕は断固拒否したいと決意を胸に、勇気を振り絞って断わる事にした。


 「絶対に⋯⋯」


 「40秒で支度しな」


 食い気味にそんな有名なセリフ使う?


 僕は呆れた表情で口をあんぐり開けて立花さんを見ていた。


 そんな僕にはお構いなく立花さんは帰る準備を始めている。


 たぶんこの人に言葉は通じないんだなと思い、僕は諦めて帰り支度を始めた。


 「僕、美容室とか知りませんからね」


 投げやりにそう伝えると。


 「行き付けがあるから付いてきな」


 そのキャラいつまで貫き通すの?と喉元まで出かけた言葉を飲み込み、僕は立花さんと十分な距離を取り、付いて行く事にした。

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